研究課題/領域番号 |
21K12563
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
松延 拓生 和歌山大学, システム工学部, 助教 (70322211)
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研究分担者 |
原田 利宣 和歌山大学, システム工学部, 教授 (80294304)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 眼球運動 / ウェブマイニング / コンテンツデザイン / 瞳孔径 / 評価構造 |
研究実績の概要 |
ウェブにより商品やサービスが提供されているが,デザインの指針は経験的なものが多く,実験を通して定量的に示されたものはほぼ皆無である.本研究では,次の2つの視点からユーザにとって使いやすく,わかりやすく,魅力的なウェブサイトデザインを構築するための要因の抽出と体系化,それを実装したレスポンシブなウェブシステムの提案を目的とする. 令和3年度はユーザがコンテンツの何を見ているのか,何を重視しているのかを明らかにする視線分析とウェブマイニングによる評価方法を開発する.具体的には代表者はアイトラッカを使用し,ユーザがウェブコンテンツのどこを見ているのか,何に関心を持っているのかを定量化するため,閲覧の際の瞳孔径変動を分析する方法を開発する.分担者はラフ集合,形式概念分析,ならびに多変量解析を組み合わせた,ユーザの理解度や選好にどの情報が影響したのかを明確化するウェブマイニング方法を構築し,その分析結果を視覚化するシステムを構築する. 成果として,文字情報によって構成されたコンテンツ(表による情報)から情報を取得する際に何を重視しているのかを分析した.分析は既存の視線解析ソフトウェアと瞳孔径変動を分析する方法を組み合わせることで行った.また,ウェブコンテンツを閲覧する際の視線位置に何があるかを取得するソフトウェアを開発した.取得した情報と瞳孔径変動の状況を時系列で出力可能なソフトウェアとなっており本年度の目標を達成している. 以上のようにユーザがコンテンツのどこを見ているのか,何に関心を持っているかの明確化するため,アイトラッカによる閲覧の際の瞳孔径変動を分析する方法の開発を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
松延班の研究では,ユーザの興味関心や意思決定プロセスを分析するためのソフトウェアを開発した.眼球運動計測による注視判定および自律神経指標の算出を行うプログラムと,分析用のウェブブラウザを実装した.評価実験の結果,被験者の自律神経指標が上昇した区間で興味関心や意思決定プロセスに関連した心理状態が確認されることを示した. また,文字情報から商品選択を行う際,興味推定のための特徴量を明らかにした.文字情報のみで構成された商品一覧表を被験者に提示し,好ましいと考える商品を選択させる実験を行った.視線をアイトラッカで計測し,終了後に作業中の視線を確認しながらインタビューで選択理由などを確認した.その結果,停留時間と興味の有無,文字情報を文章,数字,単語といった特徴に分けた場合,数字を見ているときのサッケード角速度に特徴があると考えられた. さらに,3DCG を用いたVR コンテンツにおいて,注視対象物に基づいた興味推定の方法を検討した.その結果,瞳孔径変動LF/HF 上昇区間と視線の停留時間を組み合わせることで,興味の高い対象が精度75%で抽出できた.特定の条件下における戻り見について興味と相関があること,瞳孔径LF/HF 上昇区間における興味の質が対象への集中であることが示唆された. 原田班の研究では,腕時計の選好を例題として,実験計画法の主効果と視線情報の関係性を明らかにすることを目的とした.実際のweb サイトを閲覧し腕時計の選好を行って貰った.プロトコル分析を実施し,発話内容から選好の要素を抽出した.その要素を用いて,直交配列表を元に架空サンプルを作成した.それらを表示し,被験者が購入したいか5 段階評価をつける際にアイトラッキングを行った.得られた評価値から各要素の主効果を算出し,主効果とアイトラッキングにより得られた眼球の動きや滞留時間を比較し,関係性を明らかにした.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方策は,基本的には当初研究計画通りとなっている.令和4年度は,実際に既存のウェブサイトをケーススタディにして,ユーザによるわかりやすさや魅力度などに関する評価を行い,その評価結果と視線分析,ならびにウェブマイニングによる評価結果の比較を行うとともに,評価方法そのものの検証も併せて行う. 研究代表者は具体的なコンテンツをケーススタディにして,ユーザの理解度,選好調査を行い,開発した瞳孔径変動を分析する方法を用いて,その評価を左右する要因(設計指針を構築する際の着眼点)を明確にする. 研究分担者はウェブコンテンツをケーススタディにして,ユーザの理解度,選好調査を行い,開発したウェブマイニング方法を用いて,評価を左右する要因(設計指針を構築する際の着眼点)を視覚化,明確化する. ウェブマイニングによる視覚化結果と瞳孔径変動の分析結果を比較,考察を行い,ユーザの評価構造や評価方法そのものの有用性を検証する.
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年はコロナ感染拡大もあり,被験者を用いた大規模な評価実験を実施する事ができなかった.研究代表者および分担者共にシステムの開発を中心に行い,評価は簡易的なものとしている.そのため当初計画していた謝金等の執行がなかった. 2022年では評価実験を予定しており,2021年分の予算を併せて執行予定である.
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