研究課題/領域番号 |
21K12564
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研究機関 | 公立はこだて未来大学 |
研究代表者 |
姜 南圭 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 准教授 (70452985)
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研究分担者 |
Johnson Andrew 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 准教授 (90551937)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 遠隔 / 共創プロセス / 共在感覚 / 共感 |
研究実績の概要 |
2021年度では,日本人同士による共創プロセスと,多国籍者の構成による共創プロセスの2つに分けて,遠隔での共創プロセスの特徴を分析した. 日本人同士の条件では,ZOOMとMiroを活用した遠隔での共創プロセスを実施し,複数の人と遠隔で創造プロセスを行う際の対話と行動などの相互行為に着目して質的分析を行った.その結果,対面での共創プロセスでは,指さしなどを用いて注目すべきところが特定され,共同注意が達成されるいることに対して,遠隔での共創プロセスにおける「共在」の感覚の特徴を明らかにした.特に,対面では,自分以外の他者が同じところに視線を向けているかどうかを確かめることは難しく、各自の身体(目)や環境に分散している資源が,遠隔作業環境では,名前が表示されているカーソルを動かしながら他者の共同注意を促し,自分が注意を向けていることも示すことができた.また,そのプロセスが,モニターの画面上の一箇所に常時まとまって表示されており,身体性がより収斂された形で実現されていることを明らかにした. また, 4か国から76名の参加者がZOOMとMiroを活用して,遠隔で共創プロセスを実行するIDSWを開催し,その特徴の可視化を試みた.その後,複数の参加者を対象に評価グリッド手法を用いの評価構造を構築し,分析することができた.その結果,遠隔での共創プロセスであるため制限される多くの特徴も明らかになり,遠隔だからこそできるより良い共創プロセスの特徴も可視化した.特に,遠隔での時間や場所の制限がなくなる環境を活かすと共に,初対面する多国籍の相手との心理的ハドルを低くするより効果的な遠隔でのアイスブレイクが必要であることがわかった.しかし,遠隔の画面上で集まるため,コミュニケーションの心理的負荷が低くなり, 遠隔でITを活用した通訳ソフトをより活用でき,共有による共感がより実現されることも明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度では,遠隔での共創プロセスの特徴を究明するため,予定していた2つの条件(日本人同士での共創プロセス条件と多国籍者との共創プロセス条件)の評価実験の実施ができた.日本人同士の条件では,相互行為に着目して質的分析によって遠隔での共創プロセスの特徴を可視化することもでき,多国籍者との条件では,評価グリッド法による評価構造を可視化することができ,遠隔での共創プロセスの特徴を明らかにすることができた.特に,これまでに4か国からの参加者が対面で行われたIDSWを遠隔で開催し,遠隔での共創プロセスの特徴を分析及び可視化したことはその成果が大きいと判断される.
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今後の研究の推進方策 |
2021年度では,遠隔で共創プロセスを2つの条件に分けてより総合的に分析を行った.特に,遠隔共有ツールMiroを用いて行われた共創プロセスを,マウスカーソルを活用する相互行為を基に分析し,遠隔での積極的な「共在」の感覚の一面が示唆された. 2022年度では,マウスカーソル以外の特徴にも着目し分析を進めるとともに,同じタスクを用いた対面での共創プロセスと遠隔での共創プロセスとの相互比較を行い,遠隔での共創プロセスで共感を得る特徴を相対評価に基づいて究明していく.また,実際に遠隔で行われた国際デザインワークショップの参加者による評価グリッド法による質的分析を加え,遠隔での共創プロセスでの共感の特徴をより多様な方向から総合的に分析し,究明していく予定である. 特に,多国籍者との遠隔での共創プロセスで挙げられた「より効果的な遠隔でのアイスブレイクによる参加者間の心理的ハドルの軽減」,「時差を考慮しながら制限のない作業時間や場所のより積極的な活用」,そして「足りない英語力でも積極的に伝えようとするコミュニケーション力」の改善方向性を基に,より効果的な共創プロセスの支援を試みる.特に, 本研究チームが拡張型ADTモデル概念を活用して開発した観察記録及びKJ法での記録共有を支援する共創プロセス支援ツールを遠隔と対面で活し,両条件によってどのような特徴をもっているかを可視化し,遠隔での共創プロセスがより豊かになるように試みる.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響が長引いたこともあり,計画していた対面のワークショップの開催,研究打ち合わせ,そして国際及び国内出張などができなくなった.その代わりに,遠隔での共創プロセスを日本人同士での条件と多国籍者と条件に分け,実施することによって,予定していた予算を使用することができなかった.しかし2022年度から国内出張及び海外出張の制限が弱くなっていることから,2021年度にできなかった対面での共創プロセスと遠隔での共創プロセスの比較実験や2021年度の研究成果を積極的に発信することを計画している.
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