研究課題/領域番号 |
21K12568
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研究機関 | 拓殖大学 |
研究代表者 |
阿部 眞理 拓殖大学, 工学部, 教授 (50193008)
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研究分担者 |
白石 照美 拓殖大学, 工学部, 教授 (70266237)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 収納家具 / 地震 / 弾性 / スギ / 圧縮木材 / 国産木材 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、スギを圧縮加工し、さらに2次加工を経ることにより、弾性を有する材に改質する性質を利用し、収納家具部材として活用することで地震で受けた揺れを軽減する支柱、台輪等の部材作製方法を明らかにすることである。 2021年度は、市販収納家具の現状を把握するため、使用実態を調査する予定であったが、先に、大手量販店および大手家具メーカにおける収納家具を調査し、製造・販売の実態を把握することとした。その結果、背の高い収納家具については、形状・寸法・材料等に対する変化は見られず、揺れによる転倒対策としては家具固定器具の提供に止まっていることが明らかとなった。この結果から、地震が頻発しているにも関わらず、揺れに対する転倒軽減対策に遅れが見られることが明らかとなった。 次に、収納家具部材として支柱部材を取り上げ、弾性スギ圧縮木材に針葉樹材あるいは広葉樹材を組み合わせた試験片を作製し、強度および弾性発揮の性質を確認することとした。針葉樹材からはスギ材、広葉樹材からはクルミ材を選択し、各4種類の弾性スギ圧縮木材との組み合わせによる試験片を作製した。これらの試験片を用い、曲げ強度、圧縮強度、揺れを受けた際の性質を試験により明らかにした。その結果、弾性スギ圧縮木材にスギ材あるいはクルミ材を組み合わせることで各強度が向上し、揺れを軽減して防振効果を発揮するといった結果を得た。 弾性スギ圧縮木材にスギ材を組み合わせる際には、中央部分にスギ材を配置すると効果があり、クルミ材の場合は、中央部分にクルミ材を、あるいは中央部分に弾性スギ圧縮木材を配置すると防振効果が発揮されるという結果を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は、市販収納家具の現状を把握するため、使用実態を調査する予定であったが、先に、大手量販店および大手家具メーカにおける収納家具を調査し、製造・販売の実態を把握することとした。その結果、形状・寸法・材料等が大きな地震を体験した現在においても変化が見られない現状を把握することができた。未実施となった収納家具使用実態については、2022年度に実施する予定であるため、問題ないと考える。 また、弾性スギ圧縮木材作製用装置を作製し、弾性を有する材に加工を施したが、1回に作製可能な量が少なく、強度試験、振動試験の実施が制限された。これを踏まえ、2022年度は装置を増やし、弾性スギ圧縮木材の作製量を増やす予定である。 なお、弾性スギ圧縮木材による収納家具を制作するにあたり、制作業者との打ち合わせのための旅費を計上していたが、コロナ禍により出張を断念した。この点については2022年度に実施の見込みが立っているため問題ないと考える。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、2021年度に抽出した弾性発揮および強度に関するデータをもとに、収納家具のフレーム部材を作製し、その部材を用いた収納家具を試作する。 さらに、試作を行うことによって弾性を妨げないフレームの部材形状・寸法・接合・接着方法を見出し、強度試験および振動試験を実施しながらデザイン要件を明らかにする。 また、2021年度に実施できなかった収納家具の使用実態調査を実施し、現状を把握することで、転倒軽減効果を持つ収納家具の開発意義を示す。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は、一般家庭における収納家具の使用実態調査を予定していたが、コロナ禍の影響を受け、調査を延期することとした。そのため、予定していた調査費用を次年度使用額に加えることとなった。なお、2022年度に実施する使用実態調査については、コロナ禍を鑑み、外部委託による調査に切り替えることとし、その経費として使用する。 また、家具部材およびそれを用いた収納家具を試作するため、材料および加工用具に対する費用が発生する。さらに、家具部材の強度試験、試作した収納家具の振動試験に対する外部委託費が発生する。なお、収納家具の試作については、外部委託業者との打ち合わせのために旅費が、各種試験の実施においては、試験補助者に対する謝金が発生する。
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