研究課題/領域番号 |
21K12574
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研究機関 | 大阪産業大学 |
研究代表者 |
松田 奈緒子 大阪産業大学, デザイン工学部, 教授 (60556900)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | インテリア / 部屋 / ひきこもり / 変化 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、約20年を経た自己の変容とインテリア空間の変化を、追跡調査によって明らかにすることである。これにより、インテリア空間側をデザインすることで、自己の効果的・肯定的変化を促す手法の確立を目指す。 この研究を遂行するには、約20年前の協力者の現在の所在の確認、調査への協力依頼と承諾に慎重を期す必要がある。そのため、初年度であるR3(2021)年度は、①調査対象者の選定や調査準備を整え、②インテリア学・デザイン学に加え臨床等も含め文献調査を行うことに、多くの労力と時間を割いた。 ①について、調査対象者への連絡が困難と思われた、約20年前に調査を実施した精神に病みを持つ若者と今でもコネクションを持つNPO団体代表者にコンタクトをとることができ、彼らに今後の調査への再協力を依頼できる環境を整えた。 ②について、ひきこもり当事者に部屋を撮影してもらい(2008、2009年当時)写真集としてまとめられた、渡辺篤『アイム ヒア プロジェクト』を対象に、文献調査を行った。38人が撮影した計159枚に映っているものを31項目に類型化し、①床が見えない部屋、②片付いた寝具やデスク、③他者との接点、④止まった時間・空間、等の特色を導き出した。 これらとは別に、ひきこもり支援団体が主催するワークショップに参加し、ひきこもり当事者やその家族の生の声として、ひきこもっていた当時の部屋と現在の部屋との違いなど貴重な情報を収集した。さらに、わが国におけるインテリア空間が時代と共にどのように変化してきたのかを探るため、1964年の創刊から50年以上に渡り発刊し続けているインテリア雑誌『DREAM』の文献調査、並びに、編集長へのインタビュー調査を行った。その結果、時代ごとに、①表紙デザインの構成の大きな変化、②撮影されているインテリア要素、③色彩の変化について、その特色を読み取ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度は、連絡先の入手が困難と見込まれていた調査対象者(約20年前に実施した精神に病みを持つ若者)と今でもコネクションを持つNPO団体の主催者とコンタクトを取ることができたため、調査対象者に対し、調査協力の交渉ができる状況までは整備した。しかし、コロナ禍で、直接に承認を得る交渉ができていない。そのため、やや遅れていると言える。 その一方で、コロナの合間に開催されたひきこもりに関するワークショップに参加し、インテリア空間の変化と自己の変容の関係性について情報を収集することができた。これは2023年度の計画であり、その点においては前倒しで進めることができている。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度で不十分だった一部の調査対象者への直接交渉と、2022年度の計画を予定通り実施する。写真投影法を用い、KJ法的映像分析により自己の表出の実態を抽出する。次に、プロトコル分析を行い、写真の背景にある意識構造を導き出す。 訪問調査とする予定であるが、もし、新型コロナの影響等で訪問が叶わない場合には、インテリア空間の写真画像はメール添付で送ってもらう等の代替案を慎重に検討し、対応していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度の研究実施に当たり、調査交渉や資料収集のための旅費の使用に多くを見込んでいたが、新型コロナの影響で十分に移動が叶わず、予定通りに使用することができなかった。また、交渉に伴う謝礼や、専門知識の提供者への謝礼も、移動が制限されたため、同様に使用することができなかった。 今年度は、昨年度の分も合わせて、全国への移動を伴う交渉及び実態調査、資料収集等を、コロナの状況を見ながら、感染対策を万全にするとともに調査対象者への配慮を最優先しつつも、研究を遂行するためにこまめに進めていく計画である。
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