研究課題/領域番号 |
21K12574
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研究機関 | 大阪産業大学 |
研究代表者 |
松田 奈緒子 大阪産業大学, デザイン工学部, 教授 (60556900)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | インテリア空間 / インテリア要素 / 追跡調査 / 時代の影響 / トレンディドラマ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、約20年を経た自己の変容とインテリア空間の変化を、追跡調査によって明らかにすることである。これにより、インテリア空間側をデザインすることで、自己の効果的・肯定的変化を促す手法の確立を目指す。 2年目であるR4(2022)年度は、①約20年前の調査対象者を対象とした実態調査、②背景にある時代の影響の分析の2つを行った。 ①について、現在は東京都、広島県、富山県に住む計7名を対象に写真投影法を用いた実態調査を実施した。また、R3(2021)年度にコンタクトを取ることができたNPO団体の主催者を通じて、約15年前に精神に病みを持つ若者を対象にした調査の対象者、1名に写真投影法を用いた実態調査を行った。 ②については、当時の若者に大きく影響を与え、時代の影響が色濃く表れていると考えられる1990年前後に放送されたトレンディドラマを対象に、そこに描かれたインテリア空間の特徴を明らかにすることを目的とした。11作品を通覧し,登場する居住空間27戸に描かれるインテリア要素48項目を抽出し,よく使用されていた要素,ほとんど使用されていなかった要素,前期・後期で異なっていた要素を明らかにした。その上で,11作品中9作品を担当した美術セットデザイナーにインタビューを行った。インテリア要素の取捨選択には6つの狙い・理由があること、さらにこれらは、視聴者の願望に沿う(戦略)、視聴者の生活実態に合わせる(世相適応)、撮影の邪魔になるものを省く(対症)の群に分類できることを見出した。その思考プロセスにおいて,舞台の手法・過去の仕事経験・旅行等で見聞した知識に着想を得ていた。特に舞台の手法がトレンディドラマに固有の特徴を生んでいた。なお、本研究成果は、「トレンディドラマに描かれたインテリア空間とその背景」(日本インテリア学会論文報告集33号、pp.7-15、2023年3月)にとりまとめている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度は、過去の連絡先を頼りに約20年前の調査対象者に直接交渉を行い、訪問による実態調査を進めることができたものの、計7名にとどまった。このことは、2021年に続き、2022年度もコロナ禍の影響で対面での接触に困難さが残っていたこと、また、20年の時を経ているため、調査対象者の捜索および調査の承諾を得るまでに時間を要したことに起因すると考える。 一方で上記7名とは別に、2023年度の計画予定であった約15年前に実施した精神に病みを持つ若者を対象とした実態調査を2022年度に実施することができ、その意味では前倒しができている。また、2022年度の計画にはなかった、自己の変容とインテリア空間の変化の背景にある時代の影響を、1990年前後に放送されたトレンディドラマで描かれたインテリア空間の特徴から一部明らかにし、予定よりも早く査読付き論文としてまとめることができた。そのため、全体としては小規模の遅れにとどまっている。
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今後の研究の推進方策 |
さらなる訪問実態調査と、2023年度の計画を予定通り実施する。実態調査の結果から得られたデータを基に、調査対象者の現在の特性(自己の表出実態・意識構造・表出の程度等)を抽出する。同時に、20年前の結果と比較する。 訪問調査とする予定であるが、もし、新型コロナの影響のように訪問が叶わない場合には、インテリア空間の写真画像はメール添付で送ってもらう等の代替案にて対応していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度の研究実施に当たり、本調査や資料収集のための旅費、交渉に伴う謝礼や調査対象者への謝礼、専門知識の提供者への謝礼、また、論文投稿料の使用に主に費やした。しかしながら、2021年度と同様に新型コロナウィルスの影響による対面での接触や移動の制限があったこと、さらに、20年の時を経ているため、調査対象者の捜索および調査の承諾を得るまでに多くの時間が必要であったことから、旅費や謝礼が持ち越された。 今年度は、訪問実態調査およびその直接交渉も含め、多くの旅費・謝礼が見込まれる。今後も、コロナの状況を見ながら、感染対策を万全にするとともに調査対象者への配慮を最優先しつつも、研究を遂行するためにこまめに使用を進めていく計画である。
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