研究課題/領域番号 |
21K12577
|
研究機関 | 科学警察研究所 |
研究代表者 |
赤尾 佳則 科学警察研究所, 法科学第四部, 室長 (30356159)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 文字 / デザイン / 共通指針 / 筆跡 / 活字フォント / 深層学習 |
研究実績の概要 |
文字種を超えたデザイン指針の理解のため,深層学習を用いた手書き文字の筆者識別に取り組んだ.手書き文字を見て「ある人が書いた」と分かることは,日常生活の中でもしばしば経験する.本実験は,このような言語化が難しく,文字全体から一貫して感じられるデザイン指針を総合的に評価し,さらに文字種を超えて評価する方法への糸口となることを意図した. 実験では,当研究所が保有する400 名,700 文字種,5回繰り返しの筆跡データベースを試料に用いた.文字の大きさを二次モーメント値で規格化した上で,深層学習に用いるデータにより,以下の2種類の実験をおこなった.①700文字種すべてを学習に用いる場合(1~3回目の筆記を学習用,4回目の筆記を検証用,5回目の筆記をテスト用に使用),②学習に用いていない文字種で識別をおこなう場合(420文字種(5回繰り返し,以下同じ)で学習し,それ以外の140文字種で検証し,残りの140文字種でテスト).深層ネットワークには,GoogLeNetを用いた. その結果,実験①:学習データに含まれる文字種でテストをおこなった場合,筆者識別精度は約95%であった.これは,異なる文字種の筆跡を一斉に学習させた場合でも,筆者にかかわる特徴を抽出できていることを示すものと考えられた.また,実験②:学習に用いなかった文字種でテストした場合も,ほぼ同程度の識別結果が得られた.このことは,ある文字種でとらえられた筆者にかかわる特徴から,他の文字種での筆者にかかわる特徴を捉えることができることを意味するものと考えられた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
筆跡データベースを使った実験のうち,予定していた内容が終了し,次年度に向けての課題が明らかとなった.活字フォントを使った実験に向け,プログラム等の準備に着手できた.
|
今後の研究の推進方策 |
筆跡データベースを使った筆者識別実験を継続するとともに,活字フォントを使ったフォント識別実験をおこなう.注視領域の解析に向けて,プログラム等の準備をおこなう.
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究動向調査のために参加する予定だった複数の学術集会が,新型コロナウイルス感染症の影響により,オンライン開催または延期となったため,参加費及び参加のための旅費が当初よりも少額となった.上記の額は,今年度参加する学術集会の登録費用,参加のための旅費等に充当する.
|