研究課題/領域番号 |
21K12577
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研究機関 | 科学警察研究所 |
研究代表者 |
赤尾 佳則 科学警察研究所, 法科学第四部, 室長 (30356159)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 文字 / デザイン / 共通指針 / 筆跡 / 活字フォント / 深層学習 |
研究実績の概要 |
本年度は,昨年度に引き続き,活字フォントを使ったフォント識別実験を継続した.漢字548字種(昨年度までに行った当研究所が保有する筆跡データベースに対する実験と同じ字種),平仮名及び数字について,異なる文字種を学習させたニューラルネットワークを用い,8種類のフォントの識別を試みた.その結果,漢字以外の平仮名や数字では,筆跡の場合は,文字種を超えた特徴の抽出が困難であったのに対し,フォントの場合は,可能となる場合が多かった. その背景の理解するため,照合順位とネットワークの活性化関数の出力値との関係を調査した.文字種を超えた特徴の抽出に失敗する場合,すなわち正解の照合順位が2位以下の場合,活性化関数の出力値は,抽出に成功する場合と比べて,順位の増加に対してゆるやかに減少した.具体的には,成功の場合,照合順位が2位の出力値は,1位の約0.2倍の値まで減少したのに対し,失敗の場合,2位で約0.8倍,5位でも約0.3~0.4倍であった.この傾向は,フォントと筆跡の場合で共通しており,1位の識別結果の採択,低順位の筆者やフォントへの着目を促す指標として有効であることが分かった. しかしながら,フォントの種類によっては,平仮名や数字において,文字種を超えた特徴の抽出が困難であった.その理解には,より多くの種類のフォントについて実験をおこなう必要があると考えられた.現在,フォントの種類を80種類に増やした実験をおこなっており,研究期間を延長の上,引き続き取り組むこととした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
活字フォントを使った実験において,フォントの種類を増やす必要が生じ,予定よりも実験期間を長く要した.注視領域の解析に着手することができなかったため,次年度に実施する準備を進めている.
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今後の研究の推進方策 |
筆跡およびフォントを使った識別実験について,深層学習の注視領域を調査する.筆跡と活字フォントの結果を対比する解析をおこない,研究を総括する.
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次年度使用額が生じた理由 |
解析するフォントの数の増加により,当初予定していた海外の学術集会での成果発表を見送ったため,参加費や旅費に充当する予定の金額を使用しなかった.上記の額は,今年度参加する学術集会の登録費用,参加のための旅費等に充当する.
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