研究課題/領域番号 |
21K12592
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
芳鐘 冬樹 筑波大学, 図書館情報メディア系, 教授 (30353428)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 図書館情報学 / 情報図書館学 / 引用分析 / 科学社会学 / 科学計量学 / 計量情報学 / 計量書誌学 / 引用分類 |
研究実績の概要 |
特許などの専門的な文書を対象に,生起する引用の機能を調査した上で,それらの類型を系統的に整理することを主たる目的に,初年度である令和3年度は,まず,分析に用いるデータを情報源から抽出して整形を行った。特許出願データについては特許公開公報,学術論文データについてはWeb of Scienceを情報源とし,またWikipediaの学術関連の記事も分析の対象とした。引用が生起している部分(引用センテンス)を抽出し,引用元の文書を引用文脈に紐付けたコンコーダンス(索引)を作成するとともに,対象文書の書誌情報や被引用数などの基本的な状況について調査を行った。基本的な状況の調査結果から得られた主な知見は,以下の3点である。 (1) 文書の内容そのものに関連する内的な要因だけでなく,外的な要因も被引用数に影響を及ぼすこと,特に,分野に関わらずプライス指数(参照文書の最新性)などの影響が大きいことが確認された。さらに,引用の持続性についても,プライス指数との関係が観察された。すなわち,引用の機能を検討するにあたっては,引用年齢(引用側と被引用側の出版・公開年の差)も踏まえるべきであることが示唆された。 (2) 文書の分野横断性(学際性)は,おおむね,分野に関わらず年々高まっていることが分かった。引用関係の分野横断性(他分野の文書を引用する傾向)の変化につながると考えられるため,引用の機能を検討するにあたっては,時系列変化にも留意すべきであることが示唆された。 (3) Wikipediaにおいて引用に相当する参照記述の追加の状況を明らかにし,Wikipediaにおける引用の機能を調査する基盤を整えた。論文における引用の機能と合わせて考察することで,特許における引用の機能の類型を整理する上での示唆を得ることができると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度の計画として挙げている(1)(2)について,おおむね予定どおり進め,さらに加えて,補足的な分析として(3)を行ったため,「おおむね順調に進展している」と判定した。 (1) 分析に用いるデータを特許公開公報の明細書から抽出する。そして,明細書の本文から,引用が生起している部分(引用センテンス)を抽出し,引用特許を引用文脈に紐付けたコンコーダンス(索引)を作成する。 (2) 作成したコンコーダンスの観察を通して,類似の機能を担う引用をグループ化する。抽出したセンテンスのみでは機能が分からない場合,必要に応じて明細書の本文全体を参照し,より広い範囲の文脈を踏まえて判断する。 (3) 学術論文およびWikipediaの学術関連の記事における引用についても分析し,引用の類型化の共通基盤を整える。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は,前年度に整備したデータを用いて,より詳細な傾向の調査を技術分野ごとに行う。その際,前年度の基本的な状況の調査結果も踏まえる。具体的には,各種別の引用数・引用年齢の分布,および,引用種別の時系列変化に関して,技術分野の特徴を分析する。特許が属す技術分野の判別は,明細書に記載された国際特許分類IPCの主分類に基づく。分野の粒度は,IPCの上位階層(セクション)を基本にし,傾向の把握が困難なものは,より詳細な下位階層(サブクラス)まで見る。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度の研究遂行においては,計算アルゴリズムの効率化を工夫し,データ処理の負担を軽減したため,データ処理用コンピュータとして,既存のコンピュータを用いることができた。そのことなどが理由で,次年度使用額が計上されている。 この次年度使用額は,新たなコンピュータの購入費の一部に充て,ビッグ・データ(1,000万件超の特許出願のフルテキストなど)を対象にした,より高度な分析のために用いる。その他の事項については,当初の交付申請時の計画どおり,研究資料,外国語論文の校閲,学会参加登録料などに使用する。
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