研究課題/領域番号 |
21K12599
|
研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
佐藤 翔 同志社大学, 免許資格課程センター, 准教授 (90707168)
|
研究分担者 |
原田 隆史 同志社大学, 免許資格課程センター, 教授 (30218648)
逸村 裕 筑波大学, 図書館情報メディア系, 教授 (50232418)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 公共図書館 / インパクト評価 |
研究実績の概要 |
社会状況の変化等に伴って、公共図書館はコンセプトやサービスの多様性を増している。しかしそれら新たな図書館やサービスが、実際に地域の人々に与える影響(インパクト)については、図書館の存在意義を考える上で重要であると指摘されつつも、その測定手法が確立されてこなかった。そこで本研究課題では、近年図書館が新たに設置された、あるいは大きくリニューアルされた自治体を対象とし、インタビュー等(質的手法)と地域統計の詳細分析(量的手法)から、具体的なインパクトとしてどのようなものがあったのかを明らかにする。さらに質問紙調査と他自治体との統計比較等により、そのインパクトの大小を測定できる手法を確立していく。複数自治体を対象にこれらの調査を行うことで、インパクトに基づく公共図書館評価の基礎を確立することが本研究の大きな目標である。 研究初年度の本年度はまずあらためて公共図書館のインパクト測定に関する国内外の調査を整理し、これまでに「インパクト」の例として挙げられてきた指標とその測定方法を整理した。量的手法に関しては地域統計の詳細分析のために『日本の図書館』、国勢調査、さらにTerraMapデータを用い、日本の公共図書館設置自治体、および図書館周辺の多様な統計データを取得した。ここから図書館新規設置等自治体を選出することで、量的手法の所与の目的を検証していく予定である。また、検討の前提として、図書館・自治体のインプット指標(蔵書冊数・人口密度等)とアウトプット指標(貸出冊数等)の関係について整理した。加えて国立国会図書館にデータ提供を依頼し、図書館サービスへの支払い意思額(willing to pay)データを取得した。 質的手法についてはコロナ禍により現地に出向いてのインタビュー調査が困難であったため、図書館の利用経験・イメージ・満足度一般に関する聞き取りを同志社大学関係者を対象に実施した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
量的手法に関しては多様なデータを取得しており、分析のための体制が整っている。おおむね順調に進展していると言える。 質的手法に関してはコロナ禍および担当予定の分担者の、研究機関外への転出に伴って予定していた通りの(図書館新設自治体等での)調査は実施できていないものの、図書館一般に関する質的調査と切り口を変えて進行している。
|
今後の研究の推進方策 |
量的手法に関してはデータ分析の体制が整っており、順調に進行することが想定できる。ただし、2021年度に実施したインプット指標とアウトプット指標の整理から、単純な自治体に関する種々の統計以外に、より詳細な地理・地形的要因(例えば隣接自治体の状況や交通網の状況、歴史的経緯など)が、アウトプットに影響することが示唆されており、これはインパクト指標についても同様である可能性がある。そこでより踏み込んだ地理的分析を実施するためにGISツールを導入し、地図上でアウトプット・インパクト指標の分布等も確認できる体制を整える予定である。 質的手法については2022年度もコロナ禍の影響により、地域に出向いてのインタビュー調査は実施が容易でないことが想定される。現地調査は調査者自身が地域の状況を把握するうえである程度、実施したいと考えているが、インタビューについてはオンラインでの実施を中心に検討したい。また、2021年度に実施した図書館インパクト一般に関する調査も並行して継続する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2021年度に予定していた図書館新規設置自治体等に赴いてのインタビュー調査が、コロナ禍および予定していた研究分担者の離脱のために実施できなかったことが、次年度使用額が生じた。 2022年度中に他の研究分担者あるいは研究代表者がインタビュー調査に赴くための費用とすることを予定しているが、コロナ禍の状況によってはオンラインでのインタビュー調査のために必要な機器および謝礼などとして利用することも検討する。
|