研究課題/領域番号 |
21K12601
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研究機関 | 長崎総合科学大学 |
研究代表者 |
奥野 正太郎 長崎総合科学大学, 長崎平和文化研究所, 研究員 (90869984)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 要塞地帯 / 写真 |
研究実績の概要 |
本研究は、原爆被爆がもたらした破壊とは何かということを改めて検討するため、原爆被曝以前の長崎市の都市像を捉え、原爆が破壊した都市像との対比から、原爆被爆による破壊の実態を明らかにし、総体として捉え、改めて「継承」すべきこととはなにか研究するための土台を据えるものである。 その方法として、前年度に引き続き、小川虎彦撮影写真のデジタル化及び被写体の調査を実施した。主に昭和3年から昭和15年までの500枚についてスキャニングと目録化作業が完了しており、累計で1000枚の写真について作業が完了している。 本年度の研究においては、①写真プリントへの加工や検閲済印等の分析にから、要塞地帯法適合した写真が生み出されていく過程や、効率的に検閲を受けるための工夫、要塞地帯下における写真の検閲システムについて検討を加え、②原爆被爆写真においても被写体となった浜口町の三菱球場について、被爆前の利活用の状況を明らかにし、③長崎港内の香焼島におけるソ連発注の砕氷船をめぐる写真から、先行研究において提示されている文献資料と写真の時系列の矛盾点を浮き彫りにした。③の矛盾点に関しては今後の検討を要するが、改めて近現代資料の幅や深さ、検討を加える上での視点について多くの示唆を得た。研究結果は、長崎平和文化研究所『平和文化研究』にて「長崎要塞における写真撮影の状況~小川虎彦写真を軸として~」として報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルス感染症対策として、被爆者との面会が難しかっただけでなく、聞き取り調査を予定していた方々の健康状態が思わしくないことから、被爆者との対面での調査についてままならない状況であった。写真そのものの調査は順調である。
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今後の研究の推進方策 |
進捗状況の遅れにつながっている被爆者からの聞き取り調査は本研究において不可欠なものである一方、体調面での配慮は今後より一層求められる。日常的なコミュニケーションをより密にとっていくなかで、可能な範囲での調査を最大限進めていく必要がある。また、写真の調査についても着実に積み重ねていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の流行に伴い、出張調査が思うに任せなかったことに加え、聞き取り調査の対象となる被爆者の体調が思わしくないことが重なり、次年度使用額が生じたもの。 新型コロナウィルス対策が緩和されたため、今後、被爆者の体調をみながら調査を進めるとともに、出張調査も実施していくことを予定している。
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