研究課題/領域番号 |
21K12610
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研究機関 | 公立はこだて未来大学 |
研究代表者 |
佐藤 直行 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 教授 (70312668)
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研究分担者 |
水原 啓暁 京都大学, 情報学研究科, 准教授 (30392137)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 脳科学 / 脳波 / 神経回路モデル |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、文章読解中の「理解の程度」を推定するための脳波解析技術を開発することである。私たちは先行研究において、文章読解中に計測した脳波データの解析により、読解した文章のどこの部分を「覚えているかどうか」を予測できることを示しており、「理解」を伴う記憶かどうかが明らかになれば、より応用価値のある技術となると考えた。令和3年度は、(1)頭部が非拘束の場合でもアーチファクトに影響を受けづらい脳波指標の検討、及び(2)オンライン及び対面講義の理解に関わる脳波計測・解析を行った。(1)体動や眼電位などのアーチファクトは全電極に同時的に混入すると想定されるため、頭皮上の時空間パターンである脳波進行波を解析すれば、自然な講義受講中の脳波を解析できると考えた。そこで、コネクトームを用いた全脳神経回路シミュレーション行い、脳波進行波パターンの特性を調べた。結果として、進行波は特定のパターンを示しやすいものの、全体的な脳活動パターンの推移に伴い、進行波パターンが即時的に変化することが明らかになった。(2)オンライン及び対面講義の理解に関わる脳波計測を行い、脳波進行波が受講状態の違いを反映するかどうかを調べた。結果として、両条件でβ波帯域(15-30 Hz)の脳波進行波パターンには差異があることを確認した。これは、講義受講に注意状態の違いを反映していると考えられた。今回の計測では条件間で理解度の差がない課題だったが、同解析手法は理解度に差異のある課題でも同様に適用可能である。以上の結果は、理解度定量の脳波解析技術開発の点で有用な結果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
感染症対策の観点から実験参加者を多く募り計測するのが難しい状況だったが、計算機シミュレーションを用いた基礎的な解析手法の開発に注力したことで、応用性のある解析手法を提案することができた。また、オンライン受講に慣れた実験参加者から脳波計測をすることで、慣れの影響をあまり受けずに、授業形式(オンラインと対面)の比較を行うことができた。以上より、本研究課題の進捗状況はおおむね順調と考えた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、私たちの先行研究の長文読解の脳計測実験を拡張し、読後に理解テストを加えることで、理解と脳波の対応関係を明らかにする。また、本研究は脳波計測の教育・学習への応用を目指すものであり、その主要な課題である頭部非拘束の脳波計測および解析手法の開発は同時に並行して進める。
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