研究課題/領域番号 |
21K12613
|
研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
牧岡 省吾 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 教授 (60264785)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 共感覚 / 自己組織化学習 / 身体化認知 / 心的数直線 |
研究実績の概要 |
2021年度は、以下の2つの検討を行った。 ・研究代表者が考案した多配置比較課題の検証のため、数字に関する空間配列共感覚を保持する実験参加者を募集し、数字の空間的配置に関する心理実験を行った(課題1)。また参加者が実際に共感覚を保持しているかどうかを厳密に検討するために、空間的配列の中の数字の位置をマウスクリックで答える課題を参加者に行ってもらった(課題2)。実験の結果、自己申告で共感覚を保持していると回答した参加者であっても、課題2で計測した数字の空間的配列が一貫していないことが判明した。これは、今回の実験参加者が数字に関する空間配列共感覚を実際には保持していないことを意味する。 ・大学院生の修士論文に向けた研究の一環として、手で操作できる物体に関する意味処理を行う際の頭頂間溝付近の局所血流量の変化をNIRSを用いて測定した。頭頂間溝は視覚や体性感覚などの複数のモダリティからの入力が交差する領域であり、マルチモーダル処理において重要な部位であることが知られている。また空間配列共感覚の原因となる数字や曜日などの系列と空間との対応も頭頂間溝付近に存在することが示唆されている。実験の結果、手で操作できる物体に関する意味処理によって頭頂間溝付近の局所血流量が増加し、かつ、手の動きを拘束することによって血流量の増加が抑制されることが示された。また、意味処理における反応時間も、手の拘束によって遅延することが分かった。これらの結果は頭頂間溝付近のマルチモーダル処理が身体の動きと密接に関係していることを意味しており、結果をまとめた論文を国際誌に投稿中である。この実験によりNIRSによる頭頂間溝付近の局所血流量の測定と分析方法が確立できたため、今後は数字の大小判断課題における頭頂間溝付近の局所血流量の変化に関する実験を実施する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症拡大のため、十分な数の心理実験を実施することができなかった。また、大阪府立大学と大阪市立大学の統合に伴う大学運営業務の増加により、研究時間が圧迫された。
|
今後の研究の推進方策 |
・共感覚者の募集方針を見直し、学外者も含めて募集を行うことで、空間配列共感覚を保持する実験参加者を確保した上で、多配置比較課題を用いた心理実験によって共感覚の形状を再現できるかどうかを検証する。 ・数字の大小判断課題における頭頂間溝付近の局所血流量の変化をNIRSによって測定する実験を実施する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症拡大のため、学会への参加がオンラインとなり、旅費を使用しなかったためである。2022年度は、状況が改善されれば国内外の学会に参加予定である。
|