研究課題/領域番号 |
21K12620
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研究機関 | 株式会社国際電気通信基礎技術研究所 |
研究代表者 |
小川 剛史 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 脳情報通信総合研究所, 主任研究員 (10614323)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 創造性 / 脳機能結合 / データ駆動 / 動的脳状態 |
研究実績の概要 |
今年度は、研究課題の「ひらめき課題の脳活動・行動の計測」を脳波装置にて行う計画であった。しかし、ひらめきなどの創造性を支えている作業記憶能力の個人差が、思考パターンや問題解決の方策に影響を及ぼす可能性が出てきた。特に、連合記憶の定着が思考の柔軟性に関わる拡散思考を阻害する可能性も考えられたため、作業記憶能力の個人差をふまえた上で、ひらめき課題の問題解決がどのように促進されるのかを評価することに計画を変更した。そこで、20分間の間隔を置いた連合記憶課題を行う際に、異なる認知負荷の作業記憶課題(N-back課題)を実施した場合、再認記憶成績がどのように変化するのか8名の被験者に対して行動実験を実施した。その結果、認知負荷が少ない条件の方が連合課題成績が向上しやすく、認知負荷が高い条件では連合記憶が阻害されていることが分かった。この結果を基に、作業記憶の認知負荷の制御が、ひらめき課題の問題解決の促進につながるのを今後、検討する。 また、研究課題の「ダイナミック脳状態モデルの構築」において検討していた解析法であるDirectLiNGAM法という因果探索法について、統計的評価方法や神経科学的解釈について精査した。具体的には、複数の脳領域間の直接効果をデータ駆動的に評価する指標である。解析法としての妥当性を検討するために、基礎的なfMRIデータ(運動実行および運動想像を行っている課題中の脳活動)に適用した。その結果、前運動野から一次運動野および後頭頂野に対する直接効果を抽出することに成功し、従来の解析手法と一致した結果が得られた。この成果を基に、本手法を高次で複雑な認知機能の処理である「ひらめき」に関わる脳内ネットワークの解明に役立つことが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初はひらめき課題の脳活動計測実験を実施する予定であったが、ひらめきの基盤となる認知機能の一つである作業記憶の個人差に着目し、基礎的な行動実験を実施したため、ひらめき課題の脳活動計測実験を次年度に実施することに変更した。
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今後の研究の推進方策 |
創造性の基盤となる作業記憶の個性について引き続き調査を行い、作業記憶の高いまたは低い群に分ける。それぞれの群に対し、ひらめき課題を行い、作業記憶能力とひらめきの個性の関係性について明らかにする。行動による違いが明らかになった上で、「ひらめき」課題を行っている際の脳活動計測を実施し、脳状態の遷移や領域間の直接効果の違いについて、解明する。
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