今年度は、研究課題の「ひらめき課題の脳活動・行動の計測」として、脳活動計測実験および行動実験を実施した。脳活動計測は、脳波計測を想定していたが、脳波装置が故障し、使用できなくなったためfMRIを用いた言語的ひらめき課題に内容を変更した。また、行動実験を精緻化するために、研究対象者の過去の履歴に頑強なかつ再現性の高い実験プロトコールを作成した。その結果、約50%の研究対象者において、ひらめき問題の解き方の方法の再現性が得られることが分かった。 次に、研究課題の「高次空間分解能の脳活動推定」および「ダイナミック脳状態モデルの構築」を行った。すでに取得済の空間的ひらめき課題中のfMRIで計測した脳活動データを用いて、隠れマルコフモデルによる動的脳状態を抽出した。その結果、ひらめきのように長時間の思考を要する場合、短い時間で回答するときに比べてデフォルトモードネットワークの活動が優位になることが分かった。一方、短い時間で回答する場合は、中央実行ネットワークが有意に活動していることが分かった。問題の解決方法の違いにより、出現する脳状態の頻度が異なることが分かった。また、問題を解決するときの脳状態の変化にも違いがあることが示唆された。このモデルを元に、言語的ひらめき課題を行っている脳活動に適用し、グランドトゥルースとなる脳状態を取得した。これにより、汎化性のあるひらめき脳状態を抽出できる可能性を示唆する結果が得られた。 また、創発的問題解決に関わる研究をアウトリーチの一環として、電子情報通信学会総合大会において、国内の創造性に関わる研究者を招待してシンポジウムを開催した。
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