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2022 年度 実施状況報告書

受精環境下における精子ナビゲーション戦略の解明と体外受精への応用

研究課題

研究課題/領域番号 21K12622
研究機関横浜国立大学

研究代表者

百武 徹  横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (20335582)

研究分担者 安井 学  地方独立行政法人神奈川県立産業技術総合研究所, 電子技術部, 主任研究員 (80426361)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード精子選別 / 集団遊泳 / 体外受精
研究実績の概要

2022年度は,以下の3つの研究項目を実施した.
①非ニュートン性の周囲流体が精子の集団遊泳に与える影響を明らかにするために,精子のクラスターを数値化することでクラスターが形成されやすい条件を調査した.まず,非ニュートン流体を精液に添加することによって,精子の直進性が増加,曲線速度,頭部振幅が減少することが分かった.また,精子濃度は高くなれば高くなるほどクラスターが多く形成されやすくなるのに対して,非ニュートン流体の濃度には最適値があるということが分かった.
②高運動精子の回収のためのマイクロ流体チップの設計・製作を行った.具体的には,精子の体長と同程度の幅を持つ複数マイクロ流路形状の設計,リソグラフィ微細加工技術によるマイクロ流体チップ製作,そして実際のウシ精子を用いた高運動性精子の回収特性の調査を行った.その結果,本研究で開発したマイクロ流体チップを用いることで,ある流路内流速の範囲内で高運動性精子を回収することができた.回収された精子を用いて実際の体外受精を実施した結果,現行の体外受精と同程度の凍結可能胚率を得ることができ,パーコール法の代替法としての有用性を示した.
③精子のスイムアップ法を利用した3次元構造を有する新しい体外受精用チップを作製し,流路高さ,テーパの有無,高低差の有無が選別する精子の濃度,運動性へ与える影響を調査した.実験の結果,培養槽の精子濃度や精子運動性は流路出口の断面積・傾斜に依存することが分かった.具体的には,精液槽の流路口の断面積が小さくなると,運動性の良い精子を選別できるが,精子濃度が下がるということが分かった.また,流路に傾斜のついたテーパを設けると,精子濃度を維持したままスイムアップにより運動性の良い精子を選別できることがわかった.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

昨年度まではコロナ禍のため、思うように出張ができず、研究協力者のもとでの体外受精の実施ができなかったが、今年度はようやく、マイクロ流体チップや3次元体外受精用チップを用いた体外受精を実施し、結果を評価することができたため、研究はおおむね順調に進展したといえる.

今後の研究の推進方策

①の精子集団遊泳に関する研究について、今年度の実験では,クラスターの割合は高くて5%程度であった.実際の卵管内環境下はさらに高い精子濃度の場合もある.したがって今後は,さらに精子濃度を上げた実験を行うことで,より大きな精子クラスターの形成過程を調査する必要がある.②のマイクロ流体チップの現状の機構では,今年度の形状は回収槽の精子濃度が低い.したがって,今後は精子濃度をあげることで卵割率を上昇させることができれば,より付加価値の高い体外受精用チップとなると考えている.③の3次元構造の体外受精用チップについては、今後はさらに体外受精用チップ形状の改良を行い,体外受精も含めた性能評価を実施する必要があると考えている.

次年度使用額が生じた理由

今年度は体外受精用チップの設計・製作、および精子運動性の評価を中心に研究を進めた.次年度は,実際にチップを用いた体外受精を実施する予定であり,より多くの消耗品や旅費(研究協力者機関への出張)が必要となる

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件)

  • [雑誌論文] 受精環境を模した流体中の精子運動特性2022

    • 著者名/発表者名
      百武徹
    • 雑誌名

      生物物理

      巻: 62 ページ: 175-177

    • DOI

      10.2142/biophys.62.175

    • 査読あり
  • [学会発表] 精子遊泳モデルを用いたマイクロ流路内の精子運動予測2022

    • 著者名/発表者名
      東山大介,櫻井凜太郎,百武徹
    • 学会等名
      第34回バイオエンジニアリング講演会
  • [学会発表] Development of an effective in vitro fertilization device featuring a three-dimensional structure2022

    • 著者名/発表者名
      Ren Kanai, Yunosuke Tosen, Toru Hyakutake
    • 学会等名
      The 9th World Congress of Biomechanics 2022
    • 国際学会
  • [学会発表] Rheotaxis-based sorting of highly motile sperm using multiple microfluidics channels2022

    • 著者名/発表者名
      Yuna Seto, Joji Shiroto, Toru Hyakutake
    • 学会等名
      The 9th World Congress of Biomechanics 2022
    • 国際学会
  • [学会発表] Predicting sperm motion in microfluidic channels with sperm swimming model2022

    • 著者名/発表者名
      Toru Hyakutake, Daisuke Higashiyama
    • 学会等名
      The 9th World Congress of Biomechanics 2022
    • 国際学会
  • [学会発表] マイクロチャネル内の精子の挙動(運動精子に及ぼす溝の効果)2022

    • 著者名/発表者名
      稲村 渉太, 早水 庸隆, 益田 卓哉, 濱田 竜生, 森田 慎一, 百武 徹
    • 学会等名
      日本機械学会第100期流体工学部門講演会
  • [学会発表] 溝付きマイクロチャネル内における精子の挙動(運動精子に及ぼす溝幅の影響)2022

    • 著者名/発表者名
      稲村 渉太, 早水 庸隆, 益田 卓哉, 濱田 竜生, 森田 慎一, 百武 徹
    • 学会等名
      日本機械学会中国四国支部第61期総会・講演会

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公開日: 2023-12-25  

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