ブレインマシンインタフェースやニューロマーケティングなど脳神経科学の知見を実用的な場面へ応用する神経工学分野の研究が期待されている.その実現のためには,フィールドなど実環境において脳神経活動を計測する技術の確立が急務である。本研究では、自然環境下で非侵襲的に脳内情報伝搬経路の可視化を実現するため,脳波から高精度脳内電気活動を時空間上でイメージングする方法を確立することを目的とした.時空間分解能を考慮して脳波逆問題を解くことにより,頭皮電位から脳内電気活動を高精度で推定することを目指した. これまでに,脳波逆問題にダイポールイメージングという脳内仮想空間上の信号強度分布を等価的に推定する方法を適用し,さらに少数電極による非侵襲脳波計測の場合でも補間法を用いることで高精度に可視化する方法を検討した.シミュレーションによって,本提案法により,補間しない場合に比べて改善がみられ,多数電極と同等の精度が得られることを確認した.実験では,構築した脳波イメージングシステムを用いて,視覚刺激提示時の背側皮質視覚路と腹側皮質視覚路における情報伝搬の可視化を試みた.点滅刺激と運動視刺激に関するタスクを用いて視覚路の伝搬経路を確認し,それぞれ生理学的知見と一致することを確認した.加えて,運動野の可視化についても検討した.運動野の伝搬経路を可視化することにより,運動の種類,左右運動の識別精度の改善を行い,ブレインコンピュータインタフェースの実用化への可能性を示唆した.
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