研究課題/領域番号 |
21K12624
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
中楯 浩康 信州大学, 学術研究院繊維学系, 准教授 (10514987)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 軸索損傷 / Tauタンパク質 / リン酸化 / ひずみ負荷 / 電気刺激 / 慢性外傷性脳症 / 頭部外傷 / 脳振盪 |
研究実績の概要 |
繰り返される軽度外傷性脳損傷は,高次機能障害などの神経変性疾患を引き起こす.この時,脳神経細胞では軸索損傷による輸送障害や細胞死が確認されており,輸送障害の一因とされているのがTau・リン酸化Tauタンパク質である.損傷機序は解明されている部分が多いが,有効な治療法は殆どないのが現状である.一方で,電気刺激が脳神経細胞の回復に有用であることが注目されている.しかし,組織レベルの応答に対する研究は多いが,電気刺激が細胞レベルに与える影響と詳しいメカニズムの解明には至ってはいない.特に,Tauの増大やリン酸化に与える影響は分かっていない.本研究では,繰り返し軽度外傷性脳損傷を模した衝撃負荷によるTauタンパク質の発現増減やリン酸化に電気刺激が与える影響をin vitro実験系で示し,神経損傷への電気刺激の有用性を明らかにする. 本年度は,対象群,ひずみを負荷したML群,ひずみ負荷後に電気刺激を印加したML+ES群の3条件で免疫蛍光染色によるリン酸化Tauタンパク質の発現面積を比較した.その結果,1細胞当たりの発現面積は,対象群に対してML群は38.5倍,ML+ES群は24.6倍となり有意な増加が認められ,繰り返しひずみ負荷によるリン酸化Tauタンパク質の発現増大を確認した.また,ML+ES群はML群に対して0.72倍に減少した.一方,ML群におけるリン酸化Tauタンパク質の発現は,軸索損傷部位だけでなく細胞体や神経突起全体に認められたが,ML+ES群では軸索損傷部位のみにTauタンパク質のリン酸化が認められた.電気刺激により,形態的損傷が確認されていない部位へのTauリン酸化の広がりを抑制したと考えられる.よって,電気刺激は,繰り返しのひずみ負荷によるTauタンパク質のリン酸化を抑制することを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,繰り返し軽度外傷性脳損傷のin vitro実験系を構築し,Tauタンパク質のリン酸化に対する電気刺激の有用性を検討することができた.実験系を構築するにあたり,長期間の細胞培養方法や,電気刺激条件を検討した.リン酸化Tauタンパク質の観察に用いた免疫蛍光染色法はこれまでにも実施経験があり同様の手技を用いた.今後より定量的にリン酸化タンパク質を測定するため,ウェスタンブロッティングによる細胞内タンパク質量比とELISAによる細胞外タンパク質濃度を評価していく.測定手技の習得を現在進めている.
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今後の研究の推進方策 |
次年度も引き続き繰り返しひずみを負荷した脳神経細胞への電気刺激実験を実施する.本年度において,Tauタンパク質のリン酸化に対する電気刺激の有用性を定性的に示したので,より定量的に電気刺激の有用性を示すため,リン酸化Tauタンパク質量を評価していく.ウェスタンブロッティングによる細胞内タンパク質量比とELISAによる細胞外タンパク質濃度を測定し,ひずみ負荷,電気刺激と,Tauタンパク質の過剰発現,Tauタンパク質のリン酸化,Tauタンパク質の細胞外漏出の関係を明らかにする.
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