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2023 年度 実施状況報告書

応力-電気誘起物質拡散解析を用いた力学負荷による骨形成機序解明と骨接合術への応用

研究課題

研究課題/領域番号 21K12631
研究機関帝京大学

研究代表者

伊藤 聰一郎  帝京大学, 付置研究所, 客員教授 (10242190)

研究分担者 横堀 壽光  帝京大学, 公私立大学の部局等, 教授 (00124636)
尾関 郷  帝京大学, 公私立大学の部局等, 講師 (10781528)
山下 仁大  東京医科歯科大学, 歯学部, 非常勤講師 (70174670)
大見 敏仁  湘南工科大学, 工学部, 准教授 (90586489)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワード応力誘起物質拡散解析 / 骨形成機構 / 静水圧応力 / 非侵襲血管疾患診断装置TRY-1 / 血管壁構造変化の評価 / 動脈硬化 / 骨粗鬆症
研究実績の概要

これまで、骨形成に関わるCaイオンの拡散・凝集挙動について静水圧応力を駆動力とする拡散方程式で解析したが、これは骨が優先的に形成されるコラーゲンまでのマクロ現象に関わるものであった。本年度はコラーゲン内へCaイオンが輸送される過程を解析し、コラーゲンの間隔が大きくなるほど流体剪断応力が高くなり、Caイオンが深くまで拡散することが示された。これまでの研究成果より、1. Caイオン等の骨形成イオンは、骨形成が優先的に生じる部位まで巨視的輸送過程も、その部位での骨化に寄与するコラーゲンへのCaイオンの侵入過程も、静水圧応力の寄与が大きいこと、2. 骨形成を促進するためには、変動負荷ではなく、静的負荷が必要であること、が示唆された。
このような骨再生の研究を進めるうち、骨再生と血管形成が強い関係を持つことに関心を持ち、研究分担者横堀らが開発した非侵襲血管疾患診断装置TRY-1を用いて血行動態と骨形成機能が相互に及ぼす影響を解明できるのではないか、という新たなアイデアを想起した。
この研究の予備実験として、国際医療福祉大学・市川病院において、原発性骨粗鬆症の女性患者15名を対象に、以下のデーターを収集した; CT/有限要素法による予測骨強度と頸動脈エコー測定値(I*値)、およびDXA法による骨密度、骨代謝マーカー、バイオマーカー、ADL(Barthel Index)。これらの関連性を確認するため、Pearsonの積率相関係数を求めた後、従属変数を頸動脈エコー測定値とし、従属変数として関連するパラメーターに年齢、体格を加えて、重回帰分析を行った。この結果、I*値と予測骨強度に有意な相関が認められ、重回帰分析でもI*値と予測骨強度値に相関が認められた。これは予測骨強度値と動脈硬化の病態が関連することを示唆する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究は以下の二つの課題からなるが、後述のごとく研究目的をより精緻に達成するため想定以上に時間を要していることが遅延の原因である。
課題1.
共同研究者の横堀と大見らは長管状骨仮骨延長モデルの研究に基づき、応力誘起物質拡散数値解析プログラムを作成した。このプロがラムを用いて荷重下で生ずるイオンの移動を数値解析して、骨形成部位と骨量を予測する解析プログラムに改良を加えるため時間を要している。本年度は、骨形成機構について、マクロスケールからミクロスケールまで解析することができ、静水圧応力が重要なパラメーターであることを明らかにできたので、本年度の研究目標は達成されたと考える。
課題2.
共同研究者の横堀は非侵襲血管疾患診断装置TRY-1を開発した。これは動脈硬化進行度や動脈瘤形成など血管壁の構造変化を評価できる。本研究ではこの装置を用いて骨粗鬆症患者の血管壁構造変化を評価するとともに、骨密度や骨代謝マーカーを同時に測定して、循環器系疾患と骨形成機能低下の相関関係を解析することを目指している。国際医療福祉大学・市川病院と連携して、原発性骨粗鬆症患者を対象にデーターを収集するための手続きに時間を要してしまった。今後、骨粗鬆症と動脈硬化との関連性が明らかになれば、医学的見地から見て、より多角的な診断が可能になることが期待される。

今後の研究の推進方策

二つの課題について以下のように研究を進める。
課題1. 長管状骨仮骨延長モデルの研究において、独自に作成した応力誘起物質拡散数値解析プログラムを用いて、荷重下で生ずるイオンの移動を数値解析する。
1.コラーゲン表面にCaイオンが輸送され、コラーゲン内部へCaイオンが到達する過程についての理論を構築するため、追加実験を行ないデーターを解析する。
2.この結果に基づき、応力誘起物質拡散解析システムを改訂する。このプログラムを用い、3次元応力解析を行なって、3次元的理論の妥当性を検証する。
課題2.研究分担者横堀らが開発したTRY(医療器製造承認番号21600BZx00440000, 2004~2009年3月、保険適用:区分A2(特定包括))は大径動脈の動脈硬化進行度や動脈瘤形成など血管壁の構造変化を評価するとともに、拍動の乱れを詳 細に計測できる。一方、国際医療福祉大学・市川病院の別所らは骨のCT画像を有限要素法で構造解析し、骨強度を予測するcomputed tomography based finite element method (CT/FEM)を考案した。国際医療福祉大学・市川病院において、原発性骨粗鬆症患者を対象にTRYを用いて血管壁構造と血流の変化を評価し、CT/FEMにより骨強度の変化を予測する。さらに二重エネルギーX線吸収測定法(dual-energy X-ray absorptiometry: DXA)法による骨密度や骨代謝マーカー等の計測を行なう。得られたデーターの相関関係を多変量解析することにより、骨粗鬆症の治療により血行動態が改善されることを示し、骨粗鬆症の治療が動脈硬化性病変の進行を抑制することを実証する。そして、血行動態と骨形成機能が相互に影響を及ぼすことを証明することを目指す。

次年度使用額が生じた理由

以下の研究を継続するために、研究費を次年度に使用する必要があった。
1.コラーゲンへのCaイオンの輸送過程について理論を構築するため、データー解析と追加実験を行う。
2.骨化過程を予測するため、応力誘起物質拡散解析システムを改訂し、3次元応力解析を行った。この実験結果を解析し、3次元的理論の妥当性を検証する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Determining optimal length of coracoid graft in the modified Bristow procedure for anterior shoulder instability: A three-dimensional finite element analysis2024

    • 著者名/発表者名
      Sano Hirotaka、Komatsuda Tatsuro、Suzuki Kazuhide、Abe Hiroo、Ozawa Hiroshi、Kumagai Jun、Yokobori Jr Toshimitsu A.
    • 雑誌名

      Bio-Medical Materials and Engineering

      巻: 35 ページ: 65~75

    • DOI

      10.3233/BME-230071

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Development of TiO2 Nanosheets with High Dye Degradation Performance by Regulating Crystal Growth2023

    • 著者名/発表者名
      Kowaka Yasuyuki、Nozaki Kosuke、Mihara Tomoyuki、Yamashita Kimihiro、Miura Hiroyuki、Tan Zhenquan、Ohara Satoshi
    • 雑誌名

      Materials

      巻: 16 ページ: 1229~1229

    • DOI

      10.3390/ma16031229

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Chemically Driven Ion Exchanging Synthesis of Na5YSi4O12-Based Glass-Ceramic Proton Conductors2023

    • 著者名/発表者名
      Okura Toshinori、Matsuoka Naoki、Takahashi Yoshiko、Yoshida Naoya、Yamashita Kimihiro
    • 雑誌名

      Materials

      巻: 16 ページ: 2155~2155

    • DOI

      10.3390/ma16062155

    • 査読あり
  • [学会発表] 骨粗鬆症患者における骨強度は動脈硬化と関連性の検証(第一報)2023

    • 著者名/発表者名
      善田督史、別所雅彦、伊藤聰一郎、波平真人、小林晃、山田正美、横堀壽光、新井健
    • 学会等名
      第25回日本骨粗鬆症学会
  • [学会発表] 有限要素解析から考える肩腱板断裂の発生・拡大機序と手術法2023

    • 著者名/発表者名
      佐野博高、小松田辰郎、小澤浩司、横堀壽光
    • 学会等名
      日本臨床バイオメカニクス学会

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公開日: 2024-12-25  

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