運動療法としての水中運動のエビデンスを構築するためには詳細な運動学データの蓄積が必要である。我々は水中でも使用可能な測定装置を用いて水中運動の評価方法を確立し、運動学的なエビデンスに基づいたトレーニング方法を立案することを目的として研究を実施した。水中で使用可能な表面筋電計・3軸加速度計を使用し、健常者を対象として陸上と水中で様々な運動の測定を実施した。結果として、陸上と水中でスクワット運動を行った場合に異なる筋活動が確認できた。具体的には膝伸展筋群に関しては水中の方が筋活動が低値となり、体幹筋群は水中の方が筋活動が高値となることが分かった。自重でのスクワット運動は体重が負荷量となるが、水中では浮力により体重が免荷される。荷重負荷の軽減により、陸上と比較して膝伸展筋等の筋活動量が低下したと考えられる。一方で水面に近い筋や運動時に水中を出入りする筋では水の抵抗によって水中運動時に筋活動が高くなったことが示唆された。本研究から水中でのスクワット運動では陸上との条件の違いにより異なる筋活動が生じることが明らかとなった。このことは運動指導を行う上で根拠となる重要な成果である。本研究の結果を踏まえ、筋活動の特性を理解した上で運動指導することでより効果的なトレーニングが実施可能となる。スクワット運動以外の動作においても解析を進め、各動作特有の筋活動特性を明らかにしていくことで、より臨床につながる研究となると考える。
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