研究課題/領域番号 |
21K12639
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研究機関 | 国立研究開発法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
大塚 明香 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所脳情報通信融合研究センター, 研究技術員 (80451417)
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研究分担者 |
横澤 宏一 北海道大学, 保健科学研究院, 教授 (20416978)
西本 博則 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所脳情報通信融合研究センター, 研究技術員 (50463716)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 脳磁界計測(MEG) / 周波数特性 / 時空間特性 / 生体磁気雑音 / 磁気共鳴血管画像(MRA) |
研究実績の概要 |
本研究では,脳の自発律動(δ,Θ,α,β,γ,HFO等),視覚・聴覚反応(auditory-/visual-steady state response,frequency-following response等),また,心拍・脈拍,呼吸等の生理活動に関連する生体磁気信号/雑音をMEG装置により一元的に検出し,成分間の周波数比を評価するための手法を開発している. 本年度(2022年度)は,本手法の基本周波数となる心拍動に関連する磁界成分について,昨年度開発した計測・解析手法の改良と検証を行った.具体的には,MEGセンサを被験者の頭部,頸部,胸部(正面側および背面側の計6箇所)に近付けた時のMEG信号を全方位的に計測し,計2160センサによる合体MEGデータを生成した.また,頭部,頸部,胸部のMR構造画像と血管画像(MRA)を基に,より浅い部位の動静脈を含む詳細なソースモデルを作成した.これらのデータおよびモデルを用いて,全ての心拍成分(PQRST波)を含む潜時帯における電流密度分布を推定した結果,心臓,頸部および浅側頭部位に由来する成分がより高い適合度で推定された.これらの結果により,計測および解析手法の妥当性と,推定結果の再現性が確認されると共に,心磁界雑音には心筋細胞の膜電位変化に伴う心室収縮に由来する磁界成分と,脳血管の脈拍動に関連する磁界成分が重畳するという仮説が支持されることが示唆された.以上が本年度の成果である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度(2022年度)は,心拍・脈拍に関連する生体磁気雑音成分について,評価手法の改良と検証を行った.計測空間および解析空間の拡大により,電流密度分布推定の精度が充分に向上したことから,MEG関連の手法についての技術開発は完了したと見做している.現在は,頸部や頭部に推定された磁気成分の起源について,血液の磁性,また,残留磁界の中での拍動(振動)の影響を含めて検討すると共に,脈拍や血流,血圧等他の生理指標の計測を進めている.一方で,脳磁界律動の計測に用いる視聴覚刺激呈示装置機器の改造と,銅箱等によるシールド箱の作成を行い,刺激由来の雑音低減効果を検証したところ,雑音の完全な遮断が実現した.以上の状況から,進捗状況はおおむね順調であると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
次年度(2023年度)は, 心磁界雑音成分の信号源として推定された各部位の電流密度と,瞬時血流量,血流速,血圧等の相関の検証を進めることで, 心磁界雑音成分の生理的機序を明らかにすることを目指す. これは, MEG信号処理手法の開発に留まらず, 循環器系の非侵襲・非接触な定量的評価法の開発など, MEG活用分野の新規開拓につながる可能性があるため, 重点的に行う. その上で, 脳磁界律動成分の計測を行い, 各成分の周波数特性の関係を基に, 生体律動の調和的階層構造を明らかにすることを目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度は新型コロナウィルスの影響で, 外部被験者に対する実験の実施と成果発表が困難であり, 予定していた国際会議に現地参加できなかったため, 予算の使用額に変更が生じた. 2023年度は複数の学会で成果を発表する予定であり, 既に採択されている.
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