研究課題/領域番号 |
21K12643
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
穂積 直裕 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30314090)
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研究分担者 |
吉田 祥子 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (40222393)
田村 和輝 浜松医科大学, 光尖端医学教育研究センター, 助教 (40822614)
長岡 亮 富山大学, 学術研究部工学系, 准教授 (60781648)
川島 朋裕 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70713824)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 超音波顕微鏡 / 音響インピーダンス / 培養細胞 / サイトカインストーム |
研究実績の概要 |
2019~2020年度A-STEPの支援を得て完成させた試作機を生かした改良を行い,免疫反応のモニタリングに適した観測系を構築した。具体的には以下の要素開発を行った。 通常反射の波形は低周波成分が欠落しており,反射係数を求めるために周波数領域の逆畳込処理を施すと,不要な低周波成分が発生し音響インピーダンスに変換する際の誤差要因となる。これを防ぐため「安定で計算時間を要する時間領域の処理」と,「高速で不安定な周波数領域の処理」を複合させて両者の利点を生かす手法を提案した。これを含むいくつかの信号処理方法を考案し,測定制御および解析プログラムとして実装した。 免疫反応による細胞の変化を追尾するための高速化を行った。ノイズの要因が測定系の低周波ゆらぎに起因することに着目し,パルス応答の周波数成分のうち焦点を結ばない低周波成分のみについて空間平均をとることによって,走査点あたりの積算平均回数を下げてもノイズが少ない画像が得られるアルゴリズムを提案・実装した。観察時間は1分程度(高精細モードで3分程度)となった。 免疫反応にともない細胞の厚みが焦点深度を超えて拡がると予想されるため,Z軸方向の調整機能を追加し位相情報をもとに波形を繋ぎ合わせて実効焦点深度を向上させた。超音波顕微鏡と光学顕微鏡を用いて同じ細胞を観察するための位置合わせ機構を構築し,試験用試料および実際の培養細胞を用いてその精度を確認した結果,概ね30μmの位置精度での合わせ込みが可能であることが判った。生物学の専門家および学生が利用できるように,ユーザーインターフェイスを向上させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
測定システムが予定どおり構築され,概ね正しいと思われる測定結果が得られているため。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き構築した計測系のチューニングを行い精度を向上させる。対象細胞とするミクログリアは脳内の免疫細胞で,神経毒に反応して細胞攻撃モードになるM1状態と,強い神経保護を示すM2モードを持つためM2モードのミクログリアを抑制すると細胞変性が進行することもあり,どちらのモードであるかを3次元音響インピーダンス像から区別する試みを行う。軽い持続性脳炎の動物から効率的にミクログリアを採取する技術を用い,細菌性毒素や有機金属による細胞死誘導の前後で,脳内免疫細胞であるミクログリアの細胞内状態の変化を可視化・追尾する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスに関係する市場の停滞のため,年度内に部品の納入目途がたたなくなったことによります。
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