研究実績の概要 |
本研究課題の2023年度での取り組みにおいて、EEGやfNIRSの計測データのような特定の周波数で振動するシグナルを成分に持つ時系列同士の相互作用を特定するために利用できる高次スペクトル解析の手法を確立し、その実用性を検証した。具体的には、複数の時系列が非線形に相互作用している際に現れるquadratic phase coupling (QPC)を検出することを目的に、three-channelモデルを用いたシミュレーション研究を行った。結果としてcross-bicoherenceおよび2変数Granger因果性という2種類の2次元周波数領域での分布に基づく指標により、QPCを効率的に検出できることを示した。特に、実際の臨床データに見られるようなシグナルノイズ比が比較的小さい状況であっても、cross-bicoherenceに基づく指標はQPCで影響される周波数成分に特異的に検出できることを明らかにした。 本研究課題全体を通じて実施した研究成果を、睡眠研究の時系列データの解析に応用可能な時系列解析手法として提案・発表した(Abe et al. Sci Rep 14, 8521 (2024))。加えて、この手法を実装したRプログラミング言語の関数をComprehensive R Archive Network上でオープンソースのRパッケージrhosaとして公開することで、広く一般に研究成果を共有し、今後の継続的な研究開発に展開できるようにした。
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