本研究は、血管内皮網付膵島β細胞シートの作製プロトコールを確立するとともに、血管内皮網付膵島β細胞シートを皮下に段階的に積層移植することで厚い膵臓様組織を構築することを目的とする。血管内皮網付膵島β細胞シートにより皮下に厚い膵臓様組織を構築できることを証明するために、『①血管内皮網付膵島β細胞シート作製条件の適正化、②血管内皮網付シートの組織内血管網構築能の検証、③構築した膵臓様組織機能の評価』の実験を行う。①に関しては、令和3度に当初の目的を達成した。令和4年度は②を中心に行い、1度に移植できる細胞シートの枚数が3枚までであること、移植した細胞シートが血流豊富な膵島様組織として生着することを確認した。さらに③に関してCTZの投与量を決定しCTZ誘発糖尿病ラット作成プロトコールを完成させた。 最終年度は、③の研究項目を進めるために、移植した細胞シートの機能を評価を健常ヌードラットへ細胞シートを移植し行った。尚、移植用の血管内皮網付膵島β細胞シートに用いる膵島β細胞は、分泌されたインスリンとラット自体が分泌するインスリンを区別するために、発光酵素(gLuc)融合インスリンを分泌するiGL細胞を用いた。 具体的な検討方法は、健常ヌードラットに血管網付細胞シート、血管網付与していない細胞シート、膵島β細胞単独細胞凝集体の3グループを移植し、ラット移植後組織のシート内血管内網、血中gluc-インスリン濃度(移植細胞分泌インスリン)を比較した。結果として、血管内網付与膵島β細胞シートは、他群よりも統計学的に有意に血管網が多く、インスリン分泌能も高いことが分かった。 今後の研究では、糖尿病ラットモデルへの血管網付与細胞シート移植を行い治療効果を実証することで、糖尿病治療への基盤としていく予定である。
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