研究課題/領域番号 |
21K12656
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
彌冨 仁 法政大学, 理工学部, 教授 (10386336)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 画像検索 / 診断支援 / 脳MRI / 次元削減 / domain adaptation / CBIR |
研究実績の概要 |
本課題は脳MR画像を対象とした類似症例検索(CBIR)技術実現のために、申請書に記載した課題[1]「撮影条件、患者によらない脳領域の高速・高精度抽出(skull stripping)技術の開発」、および課題[2]の「脳MRI画像(高次元データ)の優れた低次元表現の獲得」に関しJohns Hopkins大学の協力のもと、昨年に引き続き予定通り研究を実施し、成果を得た。 課題[1]は関連する全ての研究に必要な前処理となる重要な課題である。従来の手法を大きくしのぐ性能の実現、SSに重要な技術要素の評価を多くの公開データセットでの確認が完了し、論文投稿段階にある。課題[2]については、(A)異なる拠点で撮像された見た目も異なるMR画像の調和方法の開発、(B)脳の病徴を保持する可読性の高い低次元表現の獲得、それぞれで成果を得た。 (A)では、昨年度までとは異なる、脳形状が大きく異なる場合でも適用可能な独自のdomain adaptation技術によるスキャナ調和方法の開発に成功した。この成果は現在IEEEの国際会議に投稿中である。(B)では、これまで同様に脳MR画像の低次元表現を獲得しながら、その表現の各次元が局所的な脳情報を保存する可読性の高い次元削減手法を開発した。この成果はIEEE SMC2022で発表した。また低次元表現へ脳情報の保存性を高めるため、次元削減に敵対的学習を導入した手法、ならびに2次元断面の組み合わせでのCBIR実現の可否の検討の2件の研究で成果を得た。それぞれ情報処理学会で発表し、うち1件は学生奨励賞を受賞した。これらの成果は今後国際誌で発表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記課題[1]のskull stripping技術については、重要な比較手法の1つの公開実装が古く、当初の予定より再現に時間を要していたが、提案手法自体の性能の確認を含めすべての条件が整い、論文投稿段階に移ることができた。この分野の研究に大きな成果を報告できる段階になった。 課題[2]もCBIR実現の上で重要な技術であり、それぞれ独自の手法により大変良好な成果が得られた。特に(A)は、機械学習技術の進歩による大規模研究が増え、他拠点間で取得されたデータ調和の重要性が極めて高くなっている。今回の脳の大きさ、特徴などが大きく異なる画像間でも調和可能な手法は、共同研究先のJohns Hopkins大からの期待が特に大きい。(B)についても、最新の手法の取り入れや、これまでにない2次元断面画像の組み合わせによるCBIRの検討など新しい切り口で成果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
本課題で目的としている脳MR画像の類似症例検索技術の実現は、多くの研究課題を含むテーマである。今後ともJohns Hopkins大の脳神経科学の専門医の協力のもと、課題研究に精力的に取り組み成果を対外的に発表していく。 課題[1]で開発した高速かつ正確なskull stripping技術は、研究室の構成員が活用できる状態になっており、これまで行えなかった多様な公開データセットに対してskull stripping処理を行っている。これにより今後より多くの病気を対象とした実践的なCBIRの研究段階に入る。 課題[2] で得られている成果をさらに改善し国際誌へ投稿するとともに、課題[1]で得られた技術を活用することにより得られる大規模で多様な脳MR画像を活用し、より実践的で効果的な手法を開発する。これらの平行した研究開発により、引き続き脳MRの類似症例検索技術の確立を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は長らくできなかった国際学会での成果発表が実現し、それにかかる費用(参加費、旅費)、などが大幅に増加した。一方それにより計画していた計算機などの物品の購入を控えたこと、また人件費の支出がなかったことなどから、全体の支出は計画額よりも低くなった。来年度は論文発表や海外発表などの成果発表を予定しているため、物品購入も含め計画的な実施を行う。
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