研究課題/領域番号 |
21K12666
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
関根 一光 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 准教授 (50447182)
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研究分担者 |
浜田 賢一 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 教授 (00301317)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 生体適合性 / スキャフォールド / 組織癒合性 |
研究実績の概要 |
補助型人工心臓(VAD)の重症心疾患治療への臨床的効果は非常に高くなっているものの,感染を主因とした術後合併症例は依然少なくない。研究代表者らはこれまで進めてきた“構造学的”かつ“化学的”に血管内膜の術後早期での創生による生体親和性に付加価値として抗菌性を付与することを目的としている。体内留置を必要とする金属製人工材料では,チタン材料が依然広く応用されている現状,内膜化を時間的に促進しつつ,抗菌性により術後合併症リスクを低減できる生体癒合性表面処理が確立できると,軟組織代替材料,硬組織再建材料のいずれにおいても貢献できると考える。 昨年度までの成果より,これまでの研究成果で得ていたI型コラーゲンによるウレタン様表面修飾法は菌類の種類によってはそれらの接着性も惹起される可能性から,ウレタン様表面へ抗菌性を付与することを目的に,既に他方で抗菌性効果の報告のあるキトサンによるウレタン様表面付与の可能性について検討することとした。キトサンは水に対して難溶性であるため,生体との相性を考慮して有機酸であるクエン酸による塗布濃度とウレタン様固定法について検討した。 結果,0.1Mクエン酸溶液であれば,従来用いていたコラーゲン溶液原液と同濃度の溶液が作成可能であり,第2相での塗布ではこの10倍希釈溶液を使用することとした。第3相は従来と同様とし,トリレンジイソシアネート-ベンゼン混合溶液によるウレタン化とベンゼンによる洗浄でチタン表面へのキトサン-ウレタン様表面修飾とした。 現在,この表面修飾についての光学的表面分析と細胞株および菌株による評価を進めており,その他キトサン-ウレタン様表面の性状評価を継続していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までの成果より,これまでの研究成果で得ていたI型コラーゲンによるウレタン様表面修飾法は菌類の種類によってはそれらの接着性も惹起される可能性から,ウレタン様表面へ抗菌性を付与することを目的に,既に他方で抗菌性効果の報告のあるキトサンによるウレタン様表面付与の可能性について検討することとした。ウレタン様表面作成においては,第1相で水酸化チタン化,第2相でアミノ基塗布による簡便な層状固定とし,第3相でアミノ基とイソシアン酸エステルによるウレタン基作成としている。この第2相における層をまずはキトサン溶液とする固定法について検討した。キトサンは水にほとんど溶けず,酸性溶液には溶解することからその選択からおこなった。数種の酸性液体についてその溶解性や溶解後特性などを評価した結果,また生体内埋植材であることから有機酸であるクエン酸を第一選択肢として塗布濃度やウレタン様固定について検討を進めた。 クエン酸水溶液はpHの都合から出来るだけ高pHで,かつ充分なキトサン溶解性である必要から,まずは1Mのクエン酸水溶液を段階的に希釈し,従来使用していたコラーゲン溶液と同程度の溶解濃度となる希釈調整をおこなった。その結果,0.1Mクエン酸溶液であれば,従来用いていたコラーゲン溶液原液と同濃度の溶液が作成可能であり,第2相での塗布ではこの10倍希釈溶液を使用することとした。第3相は従来と同様とし,トリレンジイソシアネート-ベンゼン混合溶液によるウレタン化とベンゼンによる洗浄でチタン表面へのキトサン-ウレタン様表面修飾とした。 現在,この表面修飾についての光学的表面分析と細胞株および菌株による評価を進めている段階であるため,おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
クエン酸によるキトサン固定については,従来のI型コラーゲンに使用していた塩酸と比較して生体への適合も良く,ウレタン化の残渣についても懸念点が無いため,従来と同様の細胞接着性が達成されれば,菌類に対する抗菌性が達成されずとも生体適合性の面では期待できる。一方で,ウレタン化課程におけるトリレンジイソシアネートは,PRTR法に既定される特定有機物であることから,環境面的な面でも改良が望まれる。そこで本法の第3相のウレタン化について,ヘキサメチレンジイソシアネートによるウレタン化について検討したい。クエン酸溶解キトサンによるNCO基へのウレア反応については未知であることから,まずは種々濃度のイソシアネート-ベンゼン混合溶液下において従来の反応温度である60度,1.5時間の反応条件で作成し,また経験上では時間依存性の炭化進行による表面の粗造化が懸念されることから,出来るだけ短時間の反応での過渡なウレア反応となる反応速度について評価したい。またこれらの手法確立後の分析についても,修飾表面のAFM法による表面粗造分析,FTIRおよXPSによる化合物の定性定量分析,細胞接着性や細胞伸展性,菌性試験などによる生化学的評価を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度の動物実験について,術中管理などによる事故的な犠牲死が無く,また埋入実験における1体あたりの埋入数を増やすことで,実験動物を削減した動物実験が実施でき,そのため要購入個体数の削減が達成された。 また一部の細胞用試薬について,使用試薬に一部変更が生じたこと,また学内共通利用機器の更新により機器使用料が減額された。以上のような結果,次年度使用額が生じた。 これらは翌年度分として請求した研究費と合わせて,次年度に控えた中型動物への生体内埋入実験などに使用する予定である。
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