研究課題/領域番号 |
21K12668
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
矢澤 徹 東京都立大学, 理学研究科, 客員研究員 (30106603)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 心拍解析 |
研究実績の概要 |
(1)動物モデルを使用し、生体心電図を記録した。寿命が尽きるまで長時間の心電図モニタリングを実施しデジタルデータとして保存。全データ区間において2周期心拍の発生について観察した。死期が迫ると2周期の心拍が発生することが確認された。(2)動物モデルを材料とした吊り下げ電極による心筋細胞活動電位記録のデータにおいて、心筋活動電位波形の形状に関して研究した。特にNaによるスパイク電位につづく「電気生理学的にはとてもあやしげな波形」、即ち、一般に信じられているように見えるけれども筆者がその存在を疑問視している電圧経時変化曲線「過分極方向へ向かう谷波形の存在」に注目した。吊り下げ電極法という「熟練が必要であるけれども」優れた手法を用いれば、いかなる激しい心筋の動きにも追随できる記録方式であることが確認できた。その結果現時点では「過分極方向へ向かう谷波形(ノッチNotch)の存在」は特殊な状況を除いて(生体アミンホルモンによる興奮状態を想定している)生体には無く、ノッチはノイズで、本研研究によっておそらく否定されるだろうと考えている。(3)数理モデル実験で、ノッチを消失させることができるパラメータが一つ見つかった。それは、カリウム平衡電位を決める式(Ekの式)の「細胞外カリウム濃度パラメータ(Ko)」およびカリウムイオン透過性(Gkの式)の「細胞外カリウム濃度パラメータ(Ko)」である。Koを増加させると、ノッチが消失する範囲があることが分岐解析から分かった。ただその領域がK+の正常な範囲から著しく逸脱した範囲にあるので、この現象の生理学的意味を追求する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)長時間の心電図モニタリングに成功し死期が迫ると2周期の心拍が発生することが確認された。(2)吊り下げ電極による心筋細胞活動電位記録のデータにおいて激しい心筋の動きにも追随できる記録方式であることが確認できた。(3)数理モデル実験で、ノッチを消失させることができるパラメータが一つ見つかった。
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今後の研究の推進方策 |
現時点では「過分極方向へ向かう谷波形(ノッチNotch)の存在」は特殊な状況を除いて(生体アミンホルモンによる興奮状態を想定している)生体には無く、ノッチはノイズだろうと考えている。実験結果だけで証明してゆくのではなく、過去において、1950年代の心筋からの微小電極細胞内誘導法による活動電位波形の記載が始まったころ、初期においてノイズをどう処理しどう対策しどう評価しているか文献学的な再勉強による理解が必要であると考え文献検索を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
大学構内への入構制限があり、特に「データ処理の委託」において予定と異なる状況が生じ、委託せずに申請者が実施した。次年度使用額はデータ保管装置の購入費に充てる予定である。
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