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2021 年度 実施状況報告書

新規表面修飾技術を応用した強力な骨固着高分子コーティングスクリューの開発

研究課題

研究課題/領域番号 21K12671
研究機関東京慈恵会医科大学

研究代表者

牛久 智加良  東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (10338874)

研究分担者 田中 賢  九州大学, 先導物質化学研究所, 教授 (00322850)
穴田 貴久  九州大学, 先導物質化学研究所, 准教授 (30398466)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワードOsseointegration / 中間水 / 高分子
研究実績の概要

本研究は、材料に形成される水和状態に着目して確立した中間水コンセプトに基づき、高分子表面修飾によるosseointegration(骨固着性)促進を誘導する新たなインプラント開発を目的としている。2021年度には純チタン製(Ti)円柱ピンへの高分子ポリ(2-メトキシエチルアクリレート;PMEA)表面修飾方法を確立することができた。表面修飾されたことを確認する予備実験として、Ti円柱ピンを用いたPMEA表面修飾効果について2群(Ti群 対 PMEA群)に分け比較検討を行った。実験では、Ti円柱ピンをラット大腿骨遠位部に設置し、4週後の骨固着性を組織切片Villanueva goldner染色で観察すると、PMEA群ではピン表面に旺盛な新生骨を認めた。ピン中央部(1mm長)についてBone to implant contact(BIC)を計測すると、PMEA群で有意にBICは高かった。ピン設置から8週後の骨固着性を力学試験(push in test)で評価すると、PMEA群で有意に力学的強度が高いことが分かった。これまでの結果から、PMEAをTi表面に修飾することで、Tiに強力な骨固着性を付加できることが示唆された。従って、整形外科や歯科における臨床の現場で現在使用されている金属製インプラント表面にPMEA修飾をすると、インプラントの弛みなどの重大な手術合併症を減らすことが可能と期待される。今後の課題として、骨固着性を得られるタイミングの検討が挙げられる。金属製インプラントを骨内に設置した後、直ちに骨固着性を得られることが理想である。PMEA表面修飾のTi円柱ピンの骨固着性を、骨内に設置後、経時的に観察することで、PMEAの表面修飾効果を得られるタイミングを検討できる。その上で、骨固着性を早める目的で他の高分子を修飾する必要があるかについて、検討予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

現在までに、PMEA表面修飾方法を確立し、動物実験でのピン設置と、骨固着性についての評価方法を概ね確立することができた。2022年度には、n数を増やしPMEA表面修飾による金属の骨固着性の向上を更に検証していく予定である。骨固着性の評価方法について、組織学的検査では非脱灰樹脂包埋で良好に切片を作成することができ、Villanueva Goldner stainingで評価できることを確認した。また力学的試験として、push in testで良好に力学的に骨固着性を評価できることを確認できた。一方、放射線学的な評価方法について未だ確立されていない。そのため、このようなstatusと評価した。放射線学的な評価:microCT を行う場合に、金属周囲に生じるハレーションでピン周囲の骨新生評価が困難であることが判明した。この課題を克服するため、ポリエチレンテレフタレート(PET:Polyethyleneterephthalate)で作製したピンを用い同様の動物実験を行い、microCT での評価が可能であるか検討予定である。
また当初の本研究計画では、チタン製スクリューへの高分子表面修飾をした上で、その修飾による骨固着性促進効果を評価することを目的とした。しかし現状では円柱ピンを用いた評価までにとどまっている。その点についても、このようなstatusと評価した理由である。

今後の研究の推進方策

純チタン製ピンを用い、PMEA表面修飾による骨固着性向上について、組織学的、力学的、放射線学的に評価を進める予定である。特に即時骨固着効果が弱い場合には、他の高分子を追加して表面修飾をする必要があるかについて検討する。必要な場合には、純チタン製ピンに新たな高分子カクテルの表面修飾を行い、確立した実験系を使って、骨固着性について経時的な評価をする予定である。

次年度使用額が生じた理由

現在、放射線学的評価方法の確立が遅れている。その評価に伴う予算を執行できなかったことが次年度使用助成金が生じた理由である。この評価を目的として、ピンの材質を、純チタンからポリエチレンテレフタレート(PET:Polyethyleneterephthalate)に変更し、改めて評価する予定である。PETピン購入、高分子修飾、動物購入、ピン設置手術に伴う消耗品購入、microCTでの解析費用に、助成金を使用させていただく予定である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Octacalcium phosphate crystals including a higher density dislocation improve its materials osteogenecity2022

    • 著者名/発表者名
      Hamai Ryo、Sakai Susumu、Shiwaku Yukari、Anada Takahisa、Tsuchiya Kaori、Ishimoto Takuya、Nakano Takayoshi、Suzuki Osamu
    • 雑誌名

      Applied Materials Today

      巻: 26 ページ: 101279~101279

    • DOI

      10.1016/j.apmt.2021.101279

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Effect of bound water content on cell adhesion strength to water-insoluble polymers2021

    • 著者名/発表者名
      Nishida Kei、Anada Takahisa、Kobayashi Shingo、Ueda Tomoya、Tanaka Masaru
    • 雑誌名

      Acta Biomaterialia

      巻: 134 ページ: 313~324

    • DOI

      10.1016/j.actbio.2021.07.058

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Attachment and Growth of Fibroblast Cells on Poly (2-Methoxyethyl Acrylate) Analog Polymers as Coating Materials2021

    • 著者名/発表者名
      Anjum Rubaiya、Nishida Kei、Matsumoto Haruka、Murakami Daiki、Kobayashi Shingo、Anada Takahisa、Tanaka Masaru
    • 雑誌名

      Coatings

      巻: 11 ページ: 461~477

    • DOI

      10.3390/coatings11040461

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Impact of simultaneous hydrolysis of OCP and PLGA on bone induction of a PLGA-OCP composite scaffold in a rat femoral defect2021

    • 著者名/発表者名
      Oizumi Itsuki、Hamai Ryo、Shiwaku Yukari、Mori Yu、Anada Takahisa、Baba Kazuyoshi、Miyatake Naohisa、Hamada Soshi、Tsuchiya Kaori、Nishimura Shin-nosuke、Itoi Eiji、Suzuki Osamu
    • 雑誌名

      Acta Biomaterialia

      巻: 124 ページ: 358~373

    • DOI

      10.1016/j.actbio.2021.01.048

    • 査読あり
  • [学会発表] ポリ 2-メトキシエチルアクリレー ト)類似体コーティングの骨芽細胞分化に与える影響2022

    • 著者名/発表者名
      穴田貴久, 門柚里, 本田義知, 田中賢
    • 学会等名
      第21回日本再生医療学会総会
  • [学会発表] 長管骨骨膜上における徐放性FGF2の長管骨内osseointegration促進効果の検討2021

    • 著者名/発表者名
      牛久智加良、池上 拓、斎藤 充
    • 学会等名
      第40回バイオマテリアル研究会
  • [学会発表] PMEA類似体高分子コーティング基板 の骨芽細胞分化への影響2021

    • 著者名/発表者名
      穴田貴久, 門柚里, 本田義知, 田中賢
    • 学会等名
      第43回日本バイオマテリアル学会/第8回アジアバイオ マテリアル学会
    • 国際学会

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公開日: 2023-12-25  

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