研究課題/領域番号 |
21K12674
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研究機関 | 名古屋学芸大学 |
研究代表者 |
早戸 亮太郎 名古屋学芸大学, 管理栄養学部, 准教授 (60440822)
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研究分担者 |
日暮 陽子 名古屋学芸大学, 管理栄養学部, 准教授 (30325633)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 褐色脂肪細胞 / 熱産生 / カルシウム / 機械刺激 |
研究実績の概要 |
これまで褐色脂肪細胞の熱産生は、体温低下に伴う交感神経活動亢進より放出されるノルアドレナリン(NA)の受容により生じる非ふるえ熱産生が主体だと考えられている。しかし、褐色脂肪細胞の分布を調べると、ヒトやマウスにおいては肩甲骨間や腋窩に多く、筋のごく近傍に位置してる。私たちは、筋収縮による振動を褐色脂肪細胞が受容すること褐色脂肪細胞が活性化し熱産生を行うのではないか、つまりは、ふるえ熱産生に少なからず褐色脂肪細胞による熱産生が寄与しているのではないかと考え、褐色脂肪細胞への振動による機械刺激が熱産生を促進するか調べ、そのメカニズムを調べる事を目的とし研究を行っている。 褐色脂肪細胞は熱産生の際、細胞内カルシウム濃度を上昇することがこれまでにわかっている。つまり、細胞内カルシウム濃度は熱産生の指標となる。そこで私たちは、マウス褐色脂肪細胞を初代培養し、カルシウム蛍光指示薬であるFura-2を負荷し、カルシウムイメージング法を適用し、機械刺激による褐色脂肪細胞内カルシウム濃度変化を調べた。その結果、機械刺激が褐色脂肪細胞内カルシウム濃度を上昇させることを明らかにした。つまり、機械刺激が褐色脂肪細胞の熱産生を促進することを初めて示したのである。そこでさらに研究を進めた結果、このカルシウム濃度上昇は細胞外からカルシウムを流入させることで生じることがわかった。また、この細胞外からカルシウムを流入させるイオンチャネルがTRPチャネルであることを明らかにした。今回の研究で機械刺激が褐色脂肪細胞による熱産生を促進することが明らかとなった。これにより振動刺激やマッサージといった外部からの機械刺激が熱産生を促進し、肥満解消に効果が期待できることがわかった。一方で、TRPチャネルを薬や食物成分により選択的に活性化できれば、これが熱産生に繋がり、延いては新たな肥満解消法の解明に繋がることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この1年間の研究により、培養マウス褐色脂肪細胞への水圧機械刺激が一過性の大きな細胞内カルシウム濃度上昇を引き起こすことがわかった。この細胞内カルシウム濃度上昇は細胞外カルシウム濃度をフリー(0 mM)にすることで抑制されることがわかった。また、これら応答は、TRPC6チャネルブロッカーであるML-9により抑制されることを見出した。さらにはRT-PCR法により褐色脂肪細胞がTRPC6チャネルのmRNAを発現することを明らかにした。これらの結果により、マウス褐色脂肪細胞機械刺激による細胞内カルシウム濃度上昇にはTRPC6チャネルが関与しており、TRPC6チャネルの開口により細胞外からカルシウムを流入することで、一過性の大きな細胞内カルシウム濃度上昇を引き起こしていることがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
この水圧機械刺激による細胞内カルシウム濃度上昇は、TRPC6チャネルにより直接受容されることでチャネルが開口し細胞外からカルシウムを流入させるのか、はたまた機械刺激は他の受容体により受容され、細胞内シグナリングによりTRPC6チャネルへと伝えられた後に開口し、細胞外からカルシウムを流入させるのか、まだ不明である。これらの点を今後解明していくために、機械刺激による褐色脂肪細胞内シグナリングへの影響を今後見ていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度の物品の購入手続きをとったが、コロナ禍ならびにウクライナ情勢の影響により物品納入に支障があったため、当該年度に間に合わなかった。次年度に同物品の購入・納入が可能となったので、次年度に使用予定である。
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