研究課題
本研究では、本学発の物性制御が自在であるハイドロゲル、Tetra-PEGゲルを用いて内視鏡治療後の消化管潰瘍の新規被覆剤を作り上げることを目標としてい る。本ハイドロゲルは2種類のゾルを散布し混合させてゲル化させるものであるが、特に昨年度までにおいてはこのゲル専用のカテーテルがないため、代替品を用いていたことからゲル本来の性能(特にゲル化時間)を達成できないことが多く、この解決が課題となっていた。昨年度、生体ブタに全身麻酔下で内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を施行し胃潰瘍を複数作成し、その潰瘍底に改良したダブルルーメンカテーテルを用いて、Tetra-PEGゲル、より瞬時にゲル化し組織接着性を高めたoligo-Tetra-PEGゲルの2種を散布し1週間後の経過を観察した実験を行い、oligo-Tetra-PEGゲルについてはスムーズな吐出が可能であったが、Tetra-PEGゲルについてはゲル化時間が早すぎたことからカテーテル吐出口にゲルがくっついてしまうという状況であった。そのため、今年度はさらに生体ブタによる実験を重ねて行った。同様に胃内に内視鏡的に潰瘍を作成し、oligo-Tetra-PEGゲル、Tetra-PEGゲルを散布した。今回は、ゲルの物性の調整に成功し、潰瘍底に両ゲルを確実に散布し、潰瘍底で即時にゲル化させることに成功した。ゲル化直後の状況では、oligo-gelの方が柔らかく潰瘍形態に準じてしっかりはまり込んでいる印象であった。1週間後に胃を摘出し潰瘍底を観察したところ、両ゲル散布後ともに穿孔は生じていなかった。
2: おおむね順調に進展している
2剤を混合し瞬時にゲル化させるTetra-PEGゲルを胃内に内視鏡的に散布するためのダブルルーメンカテーテルについて、概ね満足のいくものが完成し、実際に生体ブタの胃内に内視鏡的に作成した人工潰瘍に対しゲル散布ならびに潰瘍被覆ができることを示すことができた。
病理学的解析により、Tetra-PEGゲル、oligo-Tetra-PEGゲル散布後の潰瘍底の治癒過程にどのような差があるかを解析し、どちらが消化管潰瘍被覆剤として適するものかを明らかにする。
動物実験が当初の想定より安価で行うことができたこと、新型コロナウイルス感染症の影響で動物実験の回数が想定よりは少なかったことによる。動物実験の追加、また結果の学会などにおける発表などにも経費を使用していく予定である。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件)
Endoscopy
巻: 55 ページ: E1234-E1235
10.1055/a-2209-0076.
Nagoya J Med Sci.
巻: 85 ページ: 807-813
10.18999/nagjms.85.4.807.
Surg Endosc.
巻: 37 ページ: 6267-6277.
10.1007/s00464-023-10111-z.