研究課題/領域番号 |
21K12685
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
河野 喬仁 九州大学, 先端医療オープンイノベーションセンター, 特任講師 (90526831)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | MRI / レドックス代謝 / DNP-MRI / 造影剤 / 画像診断 |
研究実績の概要 |
MRIは空間分解能と非侵襲という利点を持つ反面、疾患部位の検出感度が不利な点を有する。本研究ではMRI診断の精度と感度を向上させ、単なる形態診断法とし用いるのではなく、病態の機能・代謝イメージングを可能とする新しい高感度MRIナノ造影剤の開発を目指す。タンパク質ナノカプセルをMRIナノ造影剤のベースとして様々に機能化し、分子標的により組織・細胞選択性の付与、機能性MRI造影剤の内包、 病態の細胞シグナルに応答したMRIシグナルの増幅を実現する。MRIナノ造影剤によって組織レベルまでしか検出できなかったMRI診断の役割を、細胞から分子レベルの病態を見出す非侵襲の機能イメージングへと発展させる。 今年度、動的核偏極(dynamic nuclear polarization; DNP)を利用し、遺伝子改変した膵癌自然発生マウス(KPCマウス)の膵癌組織をDNP-MRI撮影することによって膵癌の検出可能であるかをまず確認した。造影剤には一般的なDNP-MRIの造影剤であるニトリキシルラジカルを有するDNP-MRI造影剤3-Carbamoyl PROXYL (CmP)を利用した。KPCマウス尾静脈よりCmPを投与し、膵臓付近の腹部表面にDNP-MRIのコイルを設置し、ベンチトップ型DNP-MRIを用いて撮影を経時的に行った。癌組織周辺に優位なCmPのシグナルを確認し、またニトロキシラジカルのレドックス代謝も確認した。DNP-MRIの有用性が示された一方、DNP-MRI撮影において検出可能な投与量が非常に多いため、より低濃度で高感度なナノ造影剤の開発も同時に行っており、その性能評価中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者が開発を進めている動的核偏極(dynamic nuclear polarization; DNP)を利用し、膵癌の検出を行った。DNP-MRI法は、フリーラジカルの電子スピンをESR遷移させ、電子スピンと核スピン の双極子相互作用により核スピンが偏極する現象(オーバーハウザー効果)を利用しMRIの感度を劇的に上昇させラジカルの情報を得る技術である。DNP-MRIによるラジカル画像は MRIと同等の空間分解能と時間分解能を有し、またニトロキシルラジカルをプローブとした場合、レドックス代謝を解析することが可能である。生体内のレドックス状態に応じて画像強度の消失速度が変化するため、この消失速度をレドックス反応速度として解析する。今年度、ニトリキシルラジカルを有するDNP-MRI造影剤3-Carbamoyl PROXYL (CmP)を利用した。CmPをKPCマウスに静脈投与しベンチトップ 型DNP-MRI装置にて造影剤の集積量およびレドックス代謝を撮影した。癌組織にシグナルを確認し、ニトリキシルラジカルの減少を確認した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度、in vivoの系において病態の機能・代謝イメージングが可能であることを確認した。今後、特異性の高いタンパク質ナノカプセルを設計・発現し、高感度な癌検出造影剤を開発する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では試薬や機器、実験動物の消耗品費を計上していたが、研究者が現有する材料だけを用いて研究を推進することができたため次年度使用額が生じた。今後はin vivoにおける性能向上・妥当性評価を行う予定であるため、差額分を含めて実験動物等の消耗品費として研究費を使用する。
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