研究課題/領域番号 |
21K12688
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
松平 崇 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (20570998)
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研究分担者 |
酒井 宏水 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (70318830)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 血液代替物 / 高分子 / ヘモグロビン / 星形ポリマー / 超分子重合 |
研究実績の概要 |
本研究では、輸血用赤血球の代替となり得る人工酸素運搬体として、超分子重合-固定法(Supramolecular Polymerization and subsequent Fixing, SPF法)により、ヘモグロビン(Hb)が放射状に三次元配置された、星形構造を持つHbポリマーを構築することを目的としている。令和3年度は、星形構造の腕(アーム)となる環状Hbモノマーの合成をPEGの分子量を変えて行い、SPF法によりリンカー長の異なる鎖状Hb-PEGポリマーを合成した。また、核(コア)となる多環Hbオリゴマーの合成、単離、物性測定を行った。 2~20 kDaの異なる分子量の鎖状PEGを用いて合成した環状Hbモノマーを、SPF法により重合した。その結果、PEGの分子量、すなわち環サイズの増大に伴い重合が開始される濃度(臨界モノマー濃度)が低下する一方で、高濃度においてはモノマー溶液の粘度と膠質浸透圧の著しい増大が確認された。また、ファントホッフ・プロットによって算出された開環重合反応のエンタルピー変化ΔHpがPEGの分子量によらず1 kJ/mol以下であったことから、環状Hbモノマーの開環重合がエントロピー駆動型であることが明らかとなった。これらの成果は、第70回高分子討論会にて発表したほか、米国化学会の専門誌Biomacromoleculesに掲載された。 さらに、四分岐PEGをHbと反応させ、星形構造の核(コア)となる二環型のHbダイマーを合成した。得られた生成物は高濃度域で特異的なレオロジー特性を示し、その結果は第28回日本血液代替物学会年次大会にて発表したほか、現在、論文投稿の準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書の研究実施計画で設定した目標のうち、「①環状Hbモノマーに用いるPEGリンカーの分子量(環サイズ)の探索」を達成した。また「②多環Hbオリゴマーの合成」も分岐数4のものについて達成し、構造探索の準備が整った。従って、研究は概ね順調に進行していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
多環Hbオリゴマーの分岐度、分子量をスクリーニングするとともに、環状Hbモノマーと組み合わせてSPF法を行い、星形Hbポリマーの合成を行う。人工酸素運搬体として有望なものについては、実験動物への投与を視野に入れた無菌的雰囲気下でのスケールアップ合成の方法を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
<次年度使用額が生じた理由> 参加した学会がコロナ禍でオンライン開催となり、出張旅費が不要となったため。また、架橋に用いる高分子材料と分離精製を行うための器具類の購入額が、予定よりも抑えられたため。 <次年度使用額の使用計画> 令和3年度の知見を分子設計に反映させた構造を持つ多環Hbオリゴマーの合成原料購入に使用する。
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