研究実績の概要 |
本研究では、輸血用赤血球の代替となり得る人工酸素運搬体として、超分子重合-固定法(Supramolecular Polymerization and subsequent Fixing, SPF法)により、ヘモグロビン(Hb)が放射状に三次元配置された、星形構造を持つHbポリマーを構築することを目的としている。 私たちは前年度に、星形構造の核(コア)として合成した二環式Hbダイマーが濃縮により開環-超分子重合し、網目構造を持つHb集合体(超分子ポリマーゲル)を形成することを見出した。令和5年度はこの超分子ポリマーゲルをワンポットで合成する手法を確立した。Hbのα2β2四量体構造を架橋点に持つこの超分子ポリマーゲルは、サブユニット間相互作用に影響を及ぼすpHや温度などの外部因子に応答して可逆にゾルーゲル転移し、またヘム部分の酸素の結合解離により大きく粘弾性が変化することを明らかにした。この結果は、第30回血液代替物学会年次大会と第35回高分子ゲル研究討論会で発表した。 また、星形構造の腕(アーム)として合成した環状Hbモノマーと、核(コア)として合成した二環式Hbダイマーの、開環重合に関するこれまでの成果をまとめ、Hbのサブユニット間相互作用を利用した新しい超分子重合法として、第20回ホスト-ゲスト・超分子化学シンポジウムとThe 13th SPSJ International Polymer Conference (IPC2023)で発表した。
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