研究課題/領域番号 |
21K12690
|
研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
秋山 好嗣 東京理科大学, 教養教育研究院葛飾キャンパス教養部, 准教授 (40640842)
|
研究分担者 |
菊池 明彦 東京理科大学, 先進工学部マテリアル創成工学科, 教授 (40266820)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | キャリアフリーDDS / DNA密生層 / 自己崩壊性高分子 / コンビネーション治療 / ナノ粒子点眼薬 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、薬物の血中滞留性や腫瘍集積性を可能にするドラッグデリバリーシステム(DDS)に着目し、核酸医薬と低分子治療薬のみで作製したキャリアフリーDDS製剤に立脚した刺激応答型眼科製剤の開発を目的としている。今年度は、DNA密生層の内核を形成する自己崩壊性高分子の(a)合成最適化、(b)刺激応答性の付与、(c)DNAとポリ(カルバメート)(PC)誘導体のコンジュゲートの作製および物性評価を検討した。 (a)自己崩壊性高分子として知られるPC誘導体は、有機スズを触媒としてアミノベンジルアルコール誘導体を重合することで得ることができる。重合後のメタノールを用いた再沈殿の量と時間を最適化したところ、ほぼ定量的にPC誘導体を得ることができた(収率:81%)。また、スケールを変えても重合度に大きな変化がないことからスケールアップ合成に向けた効率的な合成条件を見出した。 (b)PC誘導体の片末端に光応答性を有するニトロベンジル誘導体の導入を試みた。核磁気共鳴(NMR)スペクトルから算出された末端基の導入率は84%と算出され、ほぼ定量的な導入に成功した。 (c)ナノ粒子点眼薬の生物学的な評価に向け、ナノ粒子の外殻は核酸医薬のアンチセンス効果(ターゲット遺伝子:RB1)が期待できる17塩基のDNAとし、そのナノ構造体を固相合成法とその後の透析法にて作製した。動的光散乱測定により、ナノ構造体の平均粒径は127 nmであった。また、ゼータ電位は-34.5 mVを示した。負電荷をもつDNAで密生層を形成させるとゼータ電位はおよそ-30.0 mVの値を示すことから、得られたナノ構造体はPC誘導体の内核をDNAで覆う構造を有していることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ナノ粒子点眼薬は、自己崩壊性高分子と核酸とのコンジュゲートが自己組織化することで形成される。安全かつ高効率なナノDDS眼科製剤とするためには、水溶液中での高い分散性に加えて、刺激に応答した自己崩壊性が求められる。今年度は、アミノベンジルアルコール誘導体をモデルとしたPC誘導体の合成最適化に成功した。また、光に応答するニトロベンジル誘導体をPC誘導体に定量的に導入する実験条件を確立した。さらには、核酸医薬コンジュゲートの自己組織化を用いて形成させたナノ構造体は、ゼータ電位より負電荷のDNAで覆われていることが示された。 一方でDNA密生層を有するナノ構造体の内核を金ナノ粒子としたDNA固定化金ナノ粒子(DNA-AuNP)は分散と凝集に伴った鮮やかな色調変化が期待できる。本助成の中核をなすナノ粒子点眼薬の治療面における基盤技術の構築と合わせて簡易診断に展開できる新たな試みとして、DNA密生層の機能化を目的としたガラクトース(β-Gal)型末端修飾剤の新規合成に着手した。アセチル化ガラクトースを原料として、糖のC1位をベンジルアルコールを介してカルボニルイミダゾール基に変換した。NMRによる構造解析から高純度なβ-Gal型末端修飾剤を得ることに成功した。 以上のことから、内核を形成するPC誘導体は自己崩壊機能を有する低分子治療薬オリゴマーとする合成に着手できていないものの、当初の研究計画通り刺激応答性の付与、核酸医薬で密生させた構造体の物性評価を遂行した。また、β-Gal末端修飾剤の合成に成功したことから、核酸医薬密生型ナノ構造体の高機能化および内核を金ナノ粒子とした目視診断への展開が期待される。
|
今後の研究の推進方策 |
1. 核酸医薬密生型キャリアフリー眼科製剤:内核をPC誘導体としたDNA密生型ナノ構造体の刺激応答機能を動的光散乱とHPLCにより評価する。次に、アンチセンス医薬と低分子医薬(カンプトテシン)オリゴマーからなるコンジュゲートを固相法にて合成し、これまでの知見に基づいたナノ構造体の作製を試みる。また、網膜芽細胞腫(Y79)を用いた毒性試験(乳酸脱水素酵素)および取込み効率評価(FACS)を実施する。 2. β-ガラクトシダーゼの目視活性評価:当初の計画にない新たな試みとして、β-ガラクトシダーゼの活性を目視検出する方法論の確立を目指し、DNA-AuNPの表層部にβ-Gal誘導体を搭載する。β-ガラクトシダーゼ処理の有無で粒子の分散・凝集に基づいた酵素活性の目視比色検出法を確立する。
|