研究課題/領域番号 |
21K12691
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
西川 元也 東京理科大学, 薬学部薬学科, 教授 (40273437)
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研究分担者 |
草森 浩輔 東京理科大学, 薬学部薬学科, 助教 (90707407)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 核酸 / 中分子医薬 / 標的化 / リガンド修飾 / タンパク結合 / 体内動態 |
研究実績の概要 |
本研究では、核酸医薬やペプチドなどの中分子医薬の標的部位へのピンポイント送達を実現するために、核酸の自己組織化を利用することで構築した核酸ナノデバイスに、標的化のためのリガンドを結合した自己組織化型ハイブリッド核酸ナノデバイスを開発する。今年度は、中分子医薬として自然免疫を活性化するCpGオリゴ(CpG)を選択し、その標的細胞である抗原提示細胞が豊富に存在するリンパ節への標的化を試みた。血清アルブミンに結合した化合物が、生体内で血清アルブミンに結合後、効率よくリンパ節へ移行することが報告されていることから、血清アルブミンとの結合親和性が高いステアリン酸(SA)をCpGオリゴに結合させたSA修飾CpG(SA-CpG)を合成した。その結果、CpGと比較して、SA-CpGはウシ血清アルブミンと高い結合性を示した。そこで、オリゴデオキシヌクレオチドの自己組織化により形成される3本足構造のDNAナノ構造体であるtripodnaに、CpGまたはSA-CpGを搭載した核酸ナノデバイスを作製した。マウス血漿タンパク質とインキュベートしたところ、CpG搭載tripodnaと比較して、SA-CpG搭載tripodnaは高いタンパク結合性を示した。ヨウ化プロピジウムで染色した核酸ナノデバイスをマウスに皮下投与したところ、SA-CpG搭載tripodnaにおいてのみ鼠径リンパ節への移行が観察された。また、CpG搭載tripodnaの投与と比較して、SA-CpG搭載tripodnaの投与により、リンパ節におけるインターロイキン(IL)-12濃度の上昇および血中IL-6濃度の低下が認められた。一方、SA-CpGの投与ではリンパ節におけるIL-12産生は低値であった。以上より、リガンドとしてSAを用いることで、CpGオリゴのリンパ節への標的化に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、核酸ナノデバイスのハイブリッド化および中分子医薬の搭載に関して、ステアリン酸(SA)修飾とCpGオリゴを対象とした検討を行い、SA修飾によりCpGオリゴの抗原提示細胞への標的指向化が可能であることを培養細胞およびマウスでの評価から実証した。以上の成果が得られたことから、「おおむね順調に進展している。」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、SA修飾核酸ナノデバイスと血漿タンパク質および細胞表面タンパク質との相互作用について、定量的に解析することで、SA修飾核酸ナノデバイスの細胞取り込み機構の解明を試みる。また、その結果をもとに、標的細胞に効率的に取り込まれるリガンド修飾核酸ナノデバイスを設計する。また、糖やコレステロールとのハイブリッド化、ホスホロチオエート修飾の利用についても検討し、中分子医薬としてはアンチセンスオリゴおよびペプチドについて評価する。
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