前年度までに開発したRadiogenomicsの手法を応用して,Radioproteomicsと呼ぶ新しい研究を行った.この研究は,画像の表現型(画像所見)とタンパク質の関係を分析するものである.乳房MR画像の腫瘍領域からRadiomics特徴量を計測し,それらを入力とした線形判別分析で,ホルモン受容体陽性乳がんを判別する手法を開発した.ROC解析による評価の結果,AUCは0.77であり,画像所見にはホルモン受容体陽性を区別する情報が一定程度含まれている可能性があることが示唆された.Radioproteomics研究のもう一つ別の対象として免疫の中心となる防御タンク質がある.一部のがんは免疫監視から逃れるため,自身のがん抗原をT細胞に認識されないように隠し免疫を抑制する.このような免疫抑制の例が免疫チェックポイントである.本研究では,免疫チェックポイント分子の活性を予測する手法を開発した.PD-L1が高発現の症例を選択し,それらの症例を乳房MR画像から計測したRadiomics特徴量を用いて判別できるかを検討した.AUCは0.81であり,画像には免疫チェックポイント分子の活性を区別する情報が含まれている可能性があることが示唆された.これらの研究から,画像検査を用いてホルモン療法や免疫チェックポイント阻害剤が奏効する患者が選択できる可能性があり,画像検査の潜在的価値が明らかになった.
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