生体軟部組織の描出に優れるシリコンウエハをアナライザとした屈折コントラスト画像法はアナライザ厚が薄いほど空間解像度が向上する。ベリリウム板に立て掛けて動作させる現行システムでは、アナライザの自重やベリリウム板との接触面によりシリコンウエハ内に歪が生じ安定性と視野の均一性を低下させるという問題があり、現状は350μm厚が限界である。そこで本研究では、一定の視野サイズを確保しつつ将来的に10μmを切る空間解像度が得られる可能性がある新発想のアナライザを導入することによって現行システムの改造を行った。 薄いアナライザ厚でも歪なく設置可能な手法として、シリコンウエハの上部にスリットを設けその上部に支柱を取り付けてアナライザを自重で鉛直にぶら下げるタイプのものを提案した。500μm厚のアナライザを試作しその保持用治具の検討とともに、アナライザ厚を100μm厚、60μm厚へ薄化を進めた。保持用治具としてアルミバーを用いると安定はするが接触による歪が残ってしまうことから、接触部に5 ㎜角程度のクッションテープを用い接触圧を抑えることで歪の発生を抑制した。また、60μm厚では視野内に歪とは別の強度斑が出現しており、シリコンウエハのメカノケミカル鏡面研磨の技術的な限界であると判断した。 そこで、100μm厚を採用し、視野均一度、回折強度曲線、長時間安定性などの基本動作特性を確認した。現状のX線カメラ視野に相当する15 mm×20 mmの視野サイズで、視野の均一性を保持し、CT撮影が可能な3~4時間程度の安定性を確保できるシステムが実現し、その回折強度曲線も計算値と合致するものであった。病理試料(前立腺)の屈折コントラストCT撮影ではアナライザによる画像斑のないCT画像を得ることに成功し、上皮細胞、腺管、腺腔、尿道、微小結石等が描出され、染色した病理像に迫るものを得る撮影システムを構築できた。
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