研究課題
●ブドウ糖・ガドペント酸メグルミンによるVX2癌の陽性造影効果の確認: ブドウ糖・ガドペント酸メグルミンの癌造影効果を確かめるには同じウサギを用いて,ブドウ糖を使わない場合も撮影する必要がある。ここではまず50mL生理食塩水にガドペント酸メグルミン0.4mL/kgを混ぜて,大腿にVX2癌が付いたウサギの耳から約10分かけて点滴し,T1強調撮影を用いて陽性造影効果の時間変化を観察した。撮影時間は点滴終了後10,30,60,90分とした。この造影から1日後に同じウサギの耳からブドウ糖・ガドペント酸メグルミンを点滴し,T1強調撮影を用いて陽性造影効果の時間変化を観察する。ガドペント酸メグルミンの濃度を0.4mL/kgとし,撮影時間は生理食塩水を使った場合と同様であった。生理食塩水を使った場合と比較して,ブドウ糖を使うことにより,明らかに陽性造影効果が向上した。●ブドウ糖・ガドプトロール癌造影剤の作製: ガドキセト酸ナトリウムと同等のガドプトロールを購入した。造影実験では5.0%-50mLのブドウ糖注射液を用い,使用体積は0.1mL/kgとした。新型コロナウィルス渦で,ウサギを使った実験は2022年に集中して行うことにした。●CdTeアレーを用いたトリプルエネルギーX線CTスキャナーの構築: ピクセルサイズが0.1mmのCdTeアレー,0.1mmフォーカスX線管,ターンテーブル等を組み合わせて空間分解能が0.1mm以下のトリプルエネルギーX線CTスキャナーを構築した。回転ステップと総回転角はそれぞれ0.5°と360°で,720ファイルのRaw画像から断層像が再構成された。ここで,33と50keVはIとGdのKエッジエネルギーで,I-Kエッジ撮影では33-50と33-100keV,Gd-Kエッジ撮影では50-100keVの範囲のフォトンを利用して撮影し,良好な画像を得ることができた。
2: おおむね順調に進展している
新型コロナウィルス渦において,岩手医科大学の7T-MRIがなかなか利用できなかったので,CdTeを用いたフォトンカウンティングCT(PC-CT)に関する研究を中心に実験を行った。CdTeアレーを用い,フォトンカウントのサブトラクション法によるプログラムを開発して,高空間分解能のPC-CTを構築した。特に,トリプルエネルギーCTの基礎研究に関する論文を投稿し,医用画像情報学会内田論文賞を受賞した。ブドウ糖・ガドペント酸メグルミンの混合注射液を用いた癌造影では,ブドウ糖を使わない場合と比較して明らかな信号強度の増加が認められ,これらの研究成果はMagnetic Resonance Imaging誌に掲載された。次にブドウ糖・ガドプトロールでの造影実験では,超音波洗浄機を使ってガドプトロール分子を均一に分散させることにより,陽性造影効果が改善されると予想される。
2022年度は7T-MRIを使った癌の造影実験を中心に研究を進めるつもりである。特にブドウ糖とガドプトロールは混合液であるが,ガドプトロールはキレートを有するため,ガドプトロールを長時間にわたってブドウ糖溶液中で均一に分散することは造影効果の飛躍的な改善につながると期待される。基礎研究用のCdTe検出器1個を使った第一世代のPC-CTでは,1% at 59.5keVのエネルギー分解能でKエッジ撮影が可能である。ここで,CdTeアレーにおける1ピクセルのエネルギー分解能は高い。しかしアレーにすることでエネルギー分解能は低下することから,この現象を補正できるPCプログラムの構築も試みるつもりである。
2021年度は新型コロナウィルス渦で,岩手医科大学に出張して7T-MRIを使用することができなかった。2022年度は出張可能であることから,担癌ウサギ,出張旅費,薬品,MRI使用料等に全ての研究費を支出する予定である。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (2件)
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