研究課題/領域番号 |
21K12715
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研究機関 | 桐蔭横浜大学 |
研究代表者 |
徳岡 由一 桐蔭横浜大学, 医用工学部, 教授 (30339907)
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研究分担者 |
池上 和志 桐蔭横浜大学, 医用工学部, 教授 (30375414)
蓮沼 裕也 桐蔭横浜大学, 医用工学部, 講師 (70643013)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 黄色ブドウ球菌 / 光線力学的不活性化 / 内在性光増感性物質 / 白色LED |
研究実績の概要 |
産生色素であるStaphyloxanthinを含むカロテノイド系化合物の発現量が異なる5種の黄色ブドウ球菌(S. aureus)を用いて、細菌の光不活性化(PDI)効果に寄与するS. aureus由来光増感性物質(PS)候補物質の抽出と、その光化学反応による活性酸素種(ROS)の生成について検証した。培養した被検菌株を遠心集菌後、エタノールに分散させて破砕後、上清を分取し、抽出液とした。抽出液を、ODSカラムを備えたHPLCを用いて分析したところ、いずれの抽出液においても、溶出時間5-10分に吸収および蛍光ピークが認められた。さらに、これらのピークに相当する成分を分取し、一重項酸素検出試薬であるSinglet Oxygen Sensor Greenを添加、白色LED光を1時間照射して一重項酸素の検出を試みた。その結果、いずれの抽出液においても一重項酸素由来の蛍光発光が認められた。このことから、分取したピーク由来化合物内には、白色LED光照射により光化学反応を起こし、一重項酸素を生成させるPSが存在することが示唆された。さらに、色素非産生株から得られたピーク由来成分においても一重項酸素の生成が認められたことから、PDI効果を発現するPSは、内在するStaphyloxanthinのような色素成分ではなく、S.aureusに普遍的に内在している物質であることが示唆された。 PDIに至適なLED光源の構築を目的に、LED光源の放射照度の評価方法について検証した。すなわち、標準LED光源の200ルクスの照度における放射照度を種々の分光放射器を用いて評価した。照度計を用いて200ルクスに調節したLED光源の放射強度を、分光放射器(CL-500A、コニカミノルタ社製およびLS-100、英弘精機社製)を用いて測定したところ、いずれも放射照度0.0583 mW/cm2であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、Staphyloxanthinのような色素成分がPSとして作用しているのではないかと予想していたが、それ以外の化合物の関与が示唆されたことは想定外であった。しかし、S. aureus内にPSが存在していることが明らかにできたことは、予定通りである。
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今後の研究の推進方策 |
S. aureus内には、Staphyloxanthinのような色素成分の有無にかかわらず、普遍的にPSが存在していることが明らかになった。今後は、それらを単離・精製し、化学構造を決定することを目標に進める。抽出・精製には、主にHPLCを利用する予定であるが、これまでPSの分析に使用していたHPLC(HITACHI社製)は分析用であるため、十分な分取量を得るには時間的、経済的に不利である。そこで、新たにHPLC(Shimazdu社製)を利用する。このHPLCはセミ分取用であり、これまでのHPLCと比較して、効率よく、単離・精製することができると考える。また、単離・精製後の化学構造の決定では、IR測定および質量分析は学内で行う予定であるが、それ以外のNMR、元素分析等は外部分析機関に依頼する予定です。 LED光源は、さまざまな製品が発売される状況にある。しかし、その放射照度の測定の標準化はなされていない。また、調光方式には、パルス幅制御(PWM)など、複数の方法があるため、測定装置の時定数と測定される照度との関係などを考慮した実験を行う必要がある。LED光源を用いるさまざまな反応解析に対して正確な評価を行うことができるよう、調査および研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
製造メーカーにおける欠品、物流の遅延等により使用予定の消耗品を入手できず実施できなかった作業を、次年度に実施するため。
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