研究課題/領域番号 |
21K12720
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
錦戸 文彦 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子医科学研究所 先進核医学基盤研究部, 主任研究員 (60367117)
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研究分担者 |
高田 英治 富山高等専門学校, その他部局等, 教授 (00270885)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 陽電子放出断層撮影 / 有機半導体 / 放射線検出器 / PET |
研究実績の概要 |
昨年度まではシンチレータとして有機半導体検出器で実績のあるプラスチックシンチレータを使用してきた。実際のPositron Emission Tomography (PET)用検出器ではエネルギーの高い消滅放射線を検出するため無機シンチレータを使用する必要が有る。そこで本年度はPET検出器の最小構成単位である1つの無機シンチレータ結晶と1つの有機半導体を用いてPET検出器の試作を行った。 試作検出器ではシンチレータにPET検出器でよく使用されるLGSOを用いた。LGSOシンチレータは光の読出し面を除き反射材(ESRフィルム+テフロンテープ)でカバーされている。シンチレータからの光の読出しには有機半導体の1種であるP3HT:BCBMからなるフォトダイオードを用いた。有機半導体の有感領域上にLGSOシンチレータを置き、反対側にある電極を読み出し基板上にカーボンペーストを用いて取り付けた。最終的にはフォトダイオードに発生した電流量を測定することで入射放射線量の計測を行った。 実験ではX線発生装置を用いて試作PET検出器に対してX線照射を行った。検出器部分にのみX線が照射されるよう配置を行い、金属製の読出しケーブルや電流計などはX線照射範囲外に設置した。20秒間照射を行い、その出力電流を測定した。その結果、立ち上がりや立下りの部分で若干の遅延が見られたもののX線の出力信号を得ることに成功した。過去に使用していたプラスチックシンチレータと比較しても高い信号が得られており、消滅放射線計測でも十分に働くであろうことが期待できる。 上記の研究成果により本研究は次のステージに進むことが可能となる。今後はPETでの計測対象である消滅放射線への適用や多チャンネル化を行うことにより、有機半導体を用いたPET検出器の実現を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は無機シンチレータと有機半導体フォトダイオードを用いた検出器の開発を行い、それを用いることで基礎的な実証実験を行うことに成功した。その研究結果により最終年度に予定している消滅放射線の計測や多チャンネル化に向けての足掛かりができたといえるため、上記の評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
1、実際のPET検出器の測定対象である511 keVの消滅放射線の計測 消滅放射線の計測を行うには今の信号処理系のみでは困難であるため必要な改良を行う。具体的にはアンプやデータ収集用のモジュールの最適化を行い消滅放射線の計測を実現する。 2、検出器の多チャンネル化 本年度使用した有機半導体フォトダイオードのマルチチャネル化、GSOシンチレータのアレイ化を行うことで、PET検出器に要求される多チャンネルでの計測を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度に参加予定であった国際会議がCOVID-19の影響でハイブリッド開催になり、現地参加を行わなかったためにその分の次年度使用額が生じた。この分は2023年度に開催される国際会議への参加のための旅費として使用する予定である。 2022年度に購入予定であった測定用の機材について2023年度初めに実施予定の実験結果を確認してからのほうがより良い仕様をもつ機材を選定できると判断したため次年度に使用することとした。2023年度に実験を進めた後に仕様の決定を行い、必要物品を調達する予定である。
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