研究課題
胸部単純写真においては、架空画像の生成、異常病変の生成、埋め込みを全体として実装するところはすでに成功している。今回はそれを用いて、架空の(肺癌を模倣した)肺結節病変を有する架空の胸部単純写真を多量生成し、それにより病変検出AIを学習させた。学習させたAIは、実際の肺癌などの症例の胸部単純写真で性能評価を行った。架空画像は512x512の解像度を持ち、医師が肉眼で確認しても真贋の区別がつかない程度のクオリティが得られた。これを65536枚生成し、AIの学習を行った。ここで、AIの学習において、架空病変を埋め込んだ画像のほか、埋め込む前の画像も利用可能であるが、このような病変あり/なしの画像ペアを効率的に学習する手法は知られていなかった。このため、このような画像ペアを効率的に学習できるフレームワークを作成した。具体的には、新規に評価関数(コストファンクション)を考案し、単一のU-netで病変あり/なしペアを効率的に学習できるようにすることに成功した。ここで、学習時には病変あり/なしペアを使うが、実際にAIを利用するときにはペアが必要とはならないように評価関数を工夫した。研究成果は国際学会(CARS)、国内学会(電子情報通信学会 医用画像研究会)で発表した。
2: おおむね順調に進展している
胸部単純写真において、最優先の課題である、架空画像のみからのAI生成、学習に成功した。これはほかに類のない研究成果であると考える。また、その過程において、新規に評価関数を設計することにより、人工画像の利点を最大限に生かしたAI学習ができるようになったことも大きいと考える。一方で英文学術論文の執筆、胸部単純写真以外への展開は未だなしえておらず、最終年度の目標となると考える。
今後の研究としては、これまでの成果をまとめ、英文誌に投稿する。ただし、成果として得られたAIの性能は未だにほかの報告されているAIにやや及ばないことから、性能向上を行い、ほかのAIに比肩する性能を目指す。そののちに臨床画像での性能評価を行い、英文誌に投稿できればと考えている。また、胸部単純写真以外の対象についても同様のアプローチで成功を目指す。ただし、多彩な病変をうまく生成できるという目標が達成でき、かつ既存のAIが苦手とする対象であることが望ましい。例えば肝臓EOB造影MRI画像などがこれに合致すると思われ、そのような対象についてさらなる研究を遂行したいと考えている。
研究環境の変化のため若干(8,495円)の残額が生じ、これを翌年度の論文発表費用などに充当する予定である。
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