研究課題/領域番号 |
21K12729
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
坂本 憲児 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 准教授 (10379290)
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研究分担者 |
小林 孝一朗 大島商船高等専門学校, 商船学科, 准教授 (10781776)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | microTAS / microPADs / 血液物性値測定 / 紙媒体チップ / PaperMEMS |
研究実績の概要 |
本年度の研究では「極微量での吸水量制限」「電極センサの集積化と測定」「測定チップの試作および基礎測定」に関して研究を行った。 昨年度行ったステンレス鋳型を用いた流路幅1mm(吸水量約5μL程度)の吸水領域の作製手法をベースに、吸水量の安定化を研究した。流動速度が遅いとサンプルの蒸発が起こるため、蒸発を避ける観点から流路幅は約3mmで作製し、吸水量約20μLで誤差は約5%に制御することが出来た。また5μL以下の吸水量制限には、本技術のステンレス鋳型の手法を微細化および紙媒体の基材変更による対応を考えており、今後継続調査の予定である。吸水流路の流動速度については、矩形流路内の流体挙動が重要になる。このため矩形流路中での流体挙動に関する解析研究を行い、その成果を応用物理学会で発表した。 電極形成は蒸着方法とスクリーン印刷+めっき方法で行い、スクリーン印刷+めっきの方法により、幅0.5mmサイズの電極形成に成功した。めっき手法により形成しているため、紙繊維の内部にまで電極形成が行われる事を確認した。これによりサンプル溶液との接触面積を増やし、接触抵抗を減らすことが可能となった。 これらの吸水量制限(約20μL)および電極形成(幅0.5mm)が可能になったため、測定用のチップ試作を行った。紙媒体流路にそって櫛歯状に電極を配置し、サンプル流動に沿って電気伝導率を測定できる構造に作製した。作製した試作チップでNaCl溶液の電気伝導率の計測を行い、NaCl濃度による伝導率の変化を測定可能な事を確認した。 これらの測定技術およびチップ形状に関しては特許を出願した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電極形成では、電極-紙基材-サンプル間の電気抵抗が高くなる点が課題であった。今回の研究でめっき手法を用いる事で紙繊維の内部にまで電極形成が行われ、接触抵抗を減らすことが可能となった。これにより、幅0.5㎜の電極でサンプル溶液の電気伝導率測定が可能になり、課題を解決することが出来た。 また液量に関しては、測定時の流動時間と蒸発の影響があるため、単純な微量化だけでは測定チップとして不完全な事が判明した。そのため当初の極微量1μL程度に近い20μLで吸水量を安定化することに成功した。さらなる微量化は、本年度行った流動解析の研究結果をベースに実施する予定である。 また電極と吸水領域(流路)の融合により、測定可能な試作チップにまとめることに成功し、基礎化学薬品(NaCl溶液)の測定を可能にした。 本チップは健康チェック器具を想定しているため、測定サンプルは生理食塩水(0.9%NaCl溶液)をベースに、健康に影響の生じる0.7%および1.1%の濃度を評価し、これらの電気伝導率の違いを評価することが出来た。すなわち、健康チェックツールとしての基礎的な検討を実施することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題では、健康チェックを行う簡易なツールとして紙媒体チップ(μPADs)の研究を進めている。本年度までに「吸水量制限」「電極センサの集積化と測定」の要素技術をまとめ、測定可能な試作チップを作製した。試作チップを用いて血漿を模擬した生理食塩水0.9%NaCl溶液と、健康に影響が出るNaCl濃度(0.7%、1.1%)の電気伝導率の違いを評価することが出来た。 今後、より体液に近い状態の模擬試料での評価を行う。具体的には血液を模した疑似サンプルとして疑似細胞(混濁物)の入ったサンプルや、ムチン、アルブミンなどを含むサンプルなどでの評価を行う。この段階で、濾紙のフィルター効果を用いた細胞・混濁物の除去を研究する。 また測定チップに対して、サンプルの液滴、サンプルの送液、(模擬)細胞の除去、サンプルの電気化学的センシング、の一連のプロセスを構築し、サンプル溶液の評価を実用に近い形で行う。この際、データ解析など自動化が可能な部分は実施を検討する。 さらに、測定チップの歩留まりが悪いという新たな課題が生じている。現在の作製プロセスでは歩留まり率10%程度であり、作製プロセスの改良によりこの問題を解決する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究用薬品の消費が予定よりも少なく、次年度に薬品を継続して購入することになったため。
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