研究課題/領域番号 |
21K12733
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
蘆田 玲子 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (90570581)
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研究分担者 |
丸山 一雄 帝京大学, 薬学部, 特任教授 (30130040)
北野 雅之 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (50314571)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 膵臓 / マイクロバブル / ドラッグデリバリー / キャビテーション / 膵がん / 超音波 |
研究実績の概要 |
我々の研究の目的はキャビテーションやヒストトリプシーといった超音波による機械的作用を用いて、抗腫瘍効果の向上および腫瘍への効率的な薬剤到達を目的としたドラッグデリバリーシステムを構築することである。本研究では以下の新規超音波治療の開発を目的としている。 (A)増感剤として現在まで開発を行ってきた局注可能な相変化ナノバブル(PCNB)を用いて、現在臨床で用いられている超音波内視鏡に装着可能な小型High Intensity Focused Ultrasound (HIFU)機器を開発し、経消化管的アプローチを用いた新規膵がん治療の開発を目指す。今回の研究の目的は我々の治療コンセプトを大型実験動物で証明することである。 (B)診断と治療が同時に行えるリピッドバブルの開発を行い、膵がんに対する抗がん剤治療において至適音響条件を探索し、安全性および有効性を証明する。今回の研究ではリピッドバブルの投与と体外からの診断レベルの音響パワーの超音波照射による組織内での抗がん剤濃度の推移を検証し、抗がん剤の抗腫瘍効果向上の有無を病理学的および生化学的に評価することである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(A)今回は以前に報告した小型HIFU機器を改良し、大型動物であるブタを用いてコンセプトの実証実験を行った。まずは静脈麻酔下で超音波内視鏡を経口的に挿入し、超音波内視鏡下に肝左葉にPCNDを局注した。その後内視鏡を抜去し、開腹後経胃的に小型HIFU機器を挿入し肝臓にHIFU照射を行ったところPCNDを局注した部分に一致して機械的破壊が生じていることが確認できた。 (B)マウス膵癌(PAN2)細胞を背部に移植した担癌マウスに対して、Gemcitabine 30mg/kgを尾静注し、超音波照射しながら、リピッドバブル(10μL)を2.5分間隔で4回間欠投与した。GE LOGIQ E9超音造影装置に腹部用プローブC1-6を用いて、コントラストモード、周波数2.2MHz、MI値0.2の条件で超音波照射した。その結果、約3.7倍の移行量の結果を得た。
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今後の研究の推進方策 |
(A)来年度はHIFU治療の安全性を確認するために基礎的検討を行う予定である。予定としては皮下移植したColon26にPCND+HIFUを照射させ、腫瘍抗原であるFn14の血中変化を測定し、治療によって血中内に腫瘍抗原が増加するかどうかを検証する。コントロールとしてはcirculating tumor cell (CTC)として血中にcolon26細胞を静脈注射を行い、Fn14の抗原性の変化を測定する予定である。 (B)今後は開発中のリピッドバブルの人体投与における安全性および至適投与量を検討する予定である。まずはリピッドバブルの製造過程を確立し、安全性の検討を小型実験動物で行い、将来的に膵がんに対し実臨床で多く用いられているGemcitabine+nabPTXの併用療法においてこのリピッドバブルを併用する際の安全性を確認するPhase1試験を行うための予備実験を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外出張予定がCOVID-19感染拡大によりキャンセルになったため。 次年度、出張費、論文投稿費に充てる予定。
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