研究課題/領域番号 |
21K12738
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研究機関 | 東海学園大学 |
研究代表者 |
松吉 ひろ子 東海学園大学, 健康栄養学部, 准教授 (10448772)
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研究分担者 |
佐藤 英俊 関西学院大学, 生命環境学部, 教授 (10300873)
三宅 牧人 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (80601400)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 膀胱上皮内癌(CIS) / ラマン分光測定 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、膀胱上皮内癌の早期発見と適切な治療法選択のために、試料の前処理を必要とせず,そのままの状態で分子情報を非侵襲的に得ることができるラマン分光分析を応用した検出方法を確立することであり、まず、原理実証実験のための膀胱上皮内癌(CIS)モデルの確立を模索した。C57BL/6マウスに0.5% N-Butyl-N-butan-4-ol-nitrosamine(BBN)を12週経口投与することによるモデル動物の作成を試みた。これまでの報告と同様に、膀胱上皮内癌(CIS)を誘導することができた。以上より、マウスを用いて、実証実験を計画することが可能であることが判明した。続いて、この方法ではラットの膀胱上皮内癌(CIS)誘導は難しいとの報告があったが、研究者らはこれまでに、ラマン分光を応用した膀胱炎の検出についてなど、主にラットを用いて研究を進めており、これまでの研究を応用することが容易と考えられるラットでの実験継続を希望し、ラットの膀胱上皮内癌(CIS)モデル作成も試みた。マウスのモデル作成と同様の方法を試したところ、マウスほどの割合でモデルが確立するわけではないが、ラットでもCISができる個体があることが分かった。この方法で誘導したラット膀胱上皮内癌(CIS)モデルを用いれば、ラットモデルでの実験継続が可能となり、実証実験成果の早期獲得が期待できると考えられる。 一方、ラマン分光測定については、研究責任者所属施設に顕微ラマン測定装置の設置を進めており、分光器の調整、レーザー設置ができれば測定が可能になる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画当初、ラットでの膀胱上皮内癌(CIS)モデルの確立は難しいと考えたが、共同研究者は、今回採用した0.5% N-Butyl-N-butan-4-ol-nitrosamine(BBN)の経口投与によるマウスモデル作成を熟知しており、このBBNの経口投与により、ラットでも、少数ではあるが、膀胱上皮内癌(CIS)を誘導できることを示した。 急性・慢性膀胱炎のラットモデルについては、摘出膀胱組織を使用した実験で、既に、ラマン分光分析法にケモメトリックスを用いた解析をすることによりラマン分光分析技術が診断に応用でき得ることを示しており、これに加えて膀胱上皮内癌(CIS)と正常臓器との判別、ならびに、膀胱上皮内癌(CIS)と膀胱炎との判別(つまり、正常組織、膀胱炎、膀胱上皮内癌(CIS)の判別)について研究を進めることにより、膀胱上皮内癌(CIS)の非侵襲検出法の確立に近づくことができると考える。
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今後の研究の推進方策 |
研究発案時には摘出膀胱での実証実験を想定していたが、現在、モデル動物作成とラマン分光測定を同時に行うことが難しいので、まず固定組織の顕微ラマン分光測定を行い、膀胱上皮内癌(CIS)モデル確立の確認、正常組織、膀胱炎、膀胱上皮内癌(CIS)の判別、励起光の進達性の検証を行う。この実験により正常組織、膀胱炎、膀胱上皮内癌(CIS)の3つの組織を判別できることが示された場合には、実際のヒトでの内視鏡を併用する検査を想定し、微小ラマンプローブを用いた測定での3つの組織の判別性について考察する。さらに、各ラマンスペクトル・解析結果を各種の化学物質(蛋白質、遺伝子等)のスペクトルと比較することにより、疾患による組織変化の原因について考察する。また、得られた結果をもとに分子生物学的解析を行い、ラマン分光による変化成因と分子生物学的解析結果(蛋白、遺伝子発現変化等)との対応を明らかにし、ラマン分光の診断技術としての有効性に加え、基礎研究への応用の可能性を探る。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度、ラマン分光装置を研究代表者研究施設に移設することになり、モデル動物確立確認をシストメトリーではなく組織化学的手法に統一したため、シストメトリーの購入を見合わせた。 今年度は昨年度の助成金を合わせて、レーザー、対物レンズ、光学系物品(レンズ、プリズム等)の購入に充て、当該研究用の顕微ラマン測定装置を完成させる予定である。
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