がんによる死亡の原因の9割以上は、がんの転移に起因している。リンパ節にがん細胞が波及し、遠隔臓器へ転移すると生存率は著しく下がる傾向がある。しかしながら、現在の画像診断技術では、非侵襲的に早期リンパ節転移を検出することができず、再発が大きな問題となっている。よって転移する前の早期リンパ節転移を検出可能な新たな診断技術が求められている。本研究は、超音波による診断法を確立する前に、リンパ節転移の形成や遠隔転移との関わりが指摘されているマクロファージに着目し、マクロファージの生理的機能を明らかにすることで新たなリンパ節診断法を確立することを目的に研究を行った。正常マウスリンパ節は 1mm 程度と非常に小さく in vivo 実験に使用することは困難であるため、脾臓マクロファージを対象に解析を行った。生体に無害な大きさの異なる蛍光有機シリカナノ粒子を経静脈で投与すると、450 nm の有機シリカナノ粒子が脾臓辺縁洞付近に特に集積しており、蛍光免疫組織染色により辺縁部に存在する Marginal zone metallophilic macrophage が特異的に貪食していることを明らかにした。さらに興味深いことに、肝臓に存在するマクロファージ(クッパー細胞)と取り込む有機シリカナノ粒子サイズとの関係を解析すると、クッパー細胞は脾臓マクロファージとは異なり、90 nm の粒子を最も効率的に取り込むことを明らかにした。これらの結果から、取り込む粒子の大きさを指標に各マクロファージを分類し、リンパ節転移を含む様々な病態との関係を明らかにすることができれば、マクロファージを標的とした新たな超音波プローブの開発や診断技術の確立につながると考えられる。
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