研究実績の概要 |
がんPDTシステムに適用可能な、架橋部位と相互作用部位から成る二量体Pcを合成し、MALDI-MSの結果から生成を確認した。また生体内での相互作用による、がん細胞への色素集積化を目的とした修飾水溶性Pcを合成し、MALDI-MS、ESI-MSの結果から生成を確認した。合成した修飾水溶性Pcは、極性部分としてアミノ基、チオエーテル基、エステル基、ピリジル基をそれぞれ有する化合物であり、得られた修飾水溶性Pcはソーレ帯およびQ帯がUV-vis測定により観測され、Pc骨格の形成が確認された。また、弱酸性や弱塩基性の状態での水への溶解性を確認し、Pc骨格の分解が起こらないことを確認した。 さらに、「生体分子―Pc複合体」の形成を確認するため、ESI-MSによる複合体検出実験を行い、相互作用した種の質量、理論マスパターンと一致したシグナルを確認、同定した。 これらのPcを実際にヒト乳ガン由来MCF-7細胞に適用し、光照射によって細胞破壊が生じるか検証を行った。細胞投与効果の検証を行うため、CO2インキュベーターを使用し、細胞を培養し取り扱える実験室環境を構築した。その結果、Pc投与と光照射の組み合わせによって、ガン細胞に対する破壊効果が得られ、連鎖PDTシステムの基盤を構築することができた。 また、レーザー照射による糖鎖脱着の確認を目的とした、レーザー照射―スペクトル検出システムを市販の分光装置を組み合わせて構築した。ダイオードレーザーに(532, 660 nm)の2種類を選択し、20X対物レンズ、レーザー光と散乱光を分離可能なフィルターをそれぞれ備えた散乱測定システムをSMA―ファイバーにより小型CCD検出器に接続して構築し、PC上から測定、データ取り込みが出来るようにした。この装置により今後、連鎖PDTシステムの基本機能の測定をし、研究データを蓄積可能となった。
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