研究課題/領域番号 |
21K12742
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
竹本 智子 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究センター, 研究員 (00450403)
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研究分担者 |
横田 秀夫 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究センター, チームリーダー (00261206)
矢野 友規 国立研究開発法人国立がん研究センター, 東病院, 科長 (70505883)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 画像診断 / 消化器内視鏡 / 人工知能 / 胃がん / 酸素飽和度 |
研究実績の概要 |
早期胃がんは消化器系がんの中でも特に診断が難しく、消化器内視鏡検査での診断精度は医師の経験や内視鏡設備の差に大きく依存する。そこで本研究では、機械学習を活用して内視鏡画像から早期胃がんを高精度に自動検出する手法を開発し、経験や設備の違いによる診断精度差の軽減を目指している。 本研究ではこれまでに畳み込みニューラルネットーワーク(CNN)を活用し、少量の学習用データから早期胃がんを自動検出するスキームを提案した。提案法ではアウトプットとして検査画像内の病変有無だけでなく、病変の存在領域を示せるようになり、このことは将来の範囲診断に活用できる可能性がある。現在までに、共同研究機関から約2年間の連続症例(約200症例)の検査画像について、専門医による正解情報付きで提供されている。それらを用いた学習及び性能評価を実施し、提案法が専門医に近い検出精度を獲得できることを確認している。これらの成果はジャーナル投稿中である。 また、平行して酸素飽和度イメージング内視鏡からの早期胃がん画像の特徴解析を実施している。これまでの知見により、がん病変内部の酸素飽和度は正常部位と異なることが示唆されているが、病変により酸素飽和度値が大きく異なることや、同一病変内の酸素飽和度値は不均一であることなどから、酸素飽和度値が画像診断に有効かは明らかになっていない。そこで本研究ではこれまでに、病変領域内外の酸素飽和度値の局所統計量などから、病変内外または病変種を明確に区別できる特徴量の探索を実施している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、消化器内視鏡の検査画像から早期胃がんを高精度に自動検出する手法の開発を目的に、主に以下3課題を実施計画に挙げている。 1.正解付きの内視鏡検査画像を学習データとしたCNNを活用し、早期胃がん領域を自動検出する方法論を開発する。 2.学習データのマルチスケール化や酸素飽和度内視鏡からの画像特徴等を活用することにより、一般的には難しいとされる早期胃がんの範囲診断を実現する。 3.専門医が作成した病変領域のアノテーション及びその臨床的特徴と、提案法が予測した病変の存在領域を解析し、本提案の有効性と限界を明らかにする。 これまでに、1の早期胃がん領域を自動検出するスキームの開発は概ね完了している。現在はその成果を投稿中である。また、2については酸素飽和度値による病変領域の画像特徴解析を実施中である。全体3年計画のうち1年目で以上のことを実施できていることから、当初の計画通り概ね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
早期胃がん自動検出法について、現在投稿中論文のアクセプトを最優先事項とする。また、引き続き酸素飽和度値とがん病変に関する特徴解析を進める。これまでの解析によって、がんの臨床的特徴によって酸素飽和度値の分布特性に差がある可能性が分かってきており、このことをCNNの学習に活用した新たな検出法の開発も進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該研究計画のうち、早期胃がんの自動検出法の開発とその評価については概ね当初の予定通り進んでいる。一方で、その成果を発表するための論文投稿について、当初予定していた雑誌がリジェクトとなったため、内容のリバイズを実施した上で再投稿を予定している。英文校正や共著者への再確認など、再投稿に関わる諸作業が次年度にずれ込んだため、それらに関連する費用(英文校正、投稿料)を次年度使用分とした。
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