特定臨床研究「重症急性移植片対宿主病の発症抑制を目的としたテプレノン併用免疫抑制療法の開発」として研究計画書を立案し、jRCT公表後令和4年2月26日から実施となった。第1例目の症例の登録が令和4年3月1日、40例目の観察期間終了は令和6年2月までのため40症例を解析対象とした。本研究の概要は臨床試験による仮説の検証である。テプレノンが、重症の急性移植片対宿主病(aGVHD)の発症を予防できるという仮説のもと、当施設の血液・腫瘍内科で行うほぼ全ての造血幹細胞移植症例において、テプレノン投与介入の有無を無作為割付し、重症aGVHDの発症率について比較を行った。このほか、移植後100日目の生存率、GVHD重篤化の早期予測を可能とする因子の探索、テプレノンによる酸化ストレスマーカー、サイトカインの発現変化を評価した。移植後4週間までに4回のタイミングで血清をバイオバンクに集積・保管し、症例報告書からデータの集積を行って、最終年度にバイオマーカーの探索的測定や重症aGVHD発症との関連性などについて統計学的解析を行った。重症aGVHD発症リスクは3/19(15.8%)対6/21(28.6%)であった(p=0.46)。介入によるサイトカインの変化率(day0 vs. day28)、酸化ストレスマーカーの変化率(pre-con vs. day14)も有意ではなかった。肝中心静脈閉塞症候群/肝類洞閉塞症候群(VOD/SOS)は重症aGVHDの一因として同定された。重症aGVHD患者ではday28のIL-33値が有意に上昇していた。結論としてテプレノンの常用量の経口投与は重症aGVHDの発症を予防しなかった。VOD/SOSとバイオマーカーとしてIL-33高値は重症aGVHDの危険因子と考えられた。令和6年10月の第86回日本血液学会学術集会で発表、論文化は今後に予定する。
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