現在、コロナウイルスPCR検査において、唾液等の検査検体からコロナ感染の陽性、陰性の判別を大量に短時間で行わなければならない状況にある。PCR検査においては、検査用容器に検体と不活性化用溶解剤を注入する検体前処理工程を行う必要があるが、従来人手による作業のため、作業効率、安全性、標準化の観点から工程自動化が必須となっている。しかし、様々な検体回収容器の形状に合わせて安定して把持しセットアップ等の作業ができるロボットハンドがなく、自動化ができない状況にある。そこで、PCR検査でボトルネックとなっている検体前処理工程において、検体容器の形状に合わせて柔軟把持できるロボットハンドを開発し、PCR検査前処理自動化装置に組み込んで自動化実験検証を行う。 柔軟な把持メカニズムを有するハンドデバイスの製作、および実験検証と改造を行い、検体容器形状に合わせて把持できるロボットハンドを開発できた。成果は台湾にて開催されたThe 12th International Multi-Conference on Engineering and Technology Innovation 2023 国際学会にて発表し、技術性と有用性に関し高評価を得た。また、CAD図面から3Dプリンタにてハンドデバイスを製作できる仕組みを構築し、短時間での大量生産が可能となった。さらに容器形状や材質についても特許収得と容器リユースのための新たな技術の産業財産権の出願を行うことができた。以上の研究成果を踏まえ、様々な形状の検体回収容器を検査装置にセットアップできるシステムを確立し、同時に開発したハンドデバイスは柔軟把持を有する新たな医療機器としての可能性を見出すことができた。
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