研究課題/領域番号 |
21K12756
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
岸野 智則 杏林大学, 保健学部, 教授 (20343478)
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研究分担者 |
川村 直弘 杏林大学, 医学部, 講師 (10406986)
田中 利明 杏林大学, 医学部, 講師 (80407006)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 超音波 / 生活習慣病 / 血液検査 / 炎症 / 脂肪 |
研究実績の概要 |
本研究は、超音波検査の新技術で生活習慣病を診ることが可能になることを目的とする。 脂肪組織は生活習慣病の発症やその合併症など、その病勢と密接に関係し、組織の血流不足と炎症が、その病態を作り出す一因となることも示唆されている。この脂肪組織は超音波検査で簡単に観察できる組織である。身体の脂肪が増えると、脂肪組織から出る生理活性物質 (サイトカイン) が変化して生活習慣病の病勢が強まることを、超音波検査を用いてこれまでに明らかにしてきた。そのため、血液の炎症性サイトカインなどでみてきた生活習慣病の病勢を、超音波検査で捉えることができれば、肉体的苦痛となる血液検査を患者に強いることなく、病勢を評価し合併症の出る危険を予知することもできるのではないかと考える。 一方で超音波検査には種々の機能があり、shear wave elastography (SWE) は近年用いられている臓器の硬さをみる機能の一つである。超音波SWEが、生活習慣病の病勢を反映する脂肪の炎症をみる手段となる新たな可能性を考えており、更に脂肪組織の血流障害(虚血)との関連性を予測している。 具体的には、1)脂肪組織のSWEなどが全身の炎症性サイトカインと関連すること、2)病勢を最も反映する脂肪組織の部位を明らかにすること、更には3)脂肪組織のSWE値などを計測することで、生活習慣病の病勢や合併症の起こる危険性がわかる方法を確立することを予定した。 これまでの準備状況も相俟って、令和3年度までに、病勢を最も反映する脂肪組織の部位が明らかになり報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
準備段階における基礎検討が十分に行われていたことも相俟って、開始年度の令和3年度内に、身体の中で生活習慣病の病勢を最も反映する脂肪組織の部位が明らかになり報告した(Metab Syndr Relat Disord 20: 148-155, 2022)。今後は、①脂肪組織などの超音波所見が炎症と関連することや、延いては ②脂肪組織などの超音波所見から生活習慣病の病勢や合併症の起こる危険性がわかる方法を確立することを目指し、現在データの集積に努めている。今後も研究成果が得られ次第、逐次報告していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
「超音波検査の新技術で生活習慣病を診る」 これまでの研究にて、1) 腹部の内臓脂肪と皮下脂肪、2)心臓周囲の心外膜下脂肪と心膜外脂肪、などについて比較した結果、身体の脂肪の部位により生活習慣病の病勢との関連性が異なることが予想されていた。これらの準備段階における基礎検討が十分に行われていたため、初年度の令和3年度内には、超音波で検査すべき最適な脂肪組織の部位を明らかにすることができた。今後は、①脂肪組織などに対して、SWEを含めた超音波検査の新技術で評価し、血液検査における1)脂肪酸組成、2)種々の炎症性アディポカイン値など、生活習慣病の病勢を反映する血液検査値との関連性を評価する。また、②超音波計測値などの所見から、生活習慣病の発症や合併症など、その病勢を把握することができないか検討していく。更に、③同時に評価している脂肪肝における肝障害の出方の有無に関して、超音波検査の所見から判断できないか検討中である。令和4年度以降も継続的に対象集団のデータを蓄積し、これに供するよう進めていく。研究成果については、結果が得られ次第、逐次種々の機会で報告していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
前記 「7.現在までの進捗状況」や、「8.今後の研究の推進方策」に記したように、研究開始前の準備段階における基礎検討が十分に行われていたため、初年度の使用はほとんどないが、令和3年度終了時点では概ね順調に進行している。次年度以降への使用持ち越しにより、以後の研究推進の後押しになるものと考えられる、今後も母集団の集積に努めていく。解析に要するデータに関しては、各種サイトカインをはじめとする血液検査に要する費用が大半を占めると予想されるため、次年度以降の研究費使用が本格的になる。また、研究成果も適宜報告していくため、学術集会への参加や発表、論文投稿などに要する費用にも充てる予定である。
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