食道癌手術における反回神経麻痺は、神経の牽引、熱損傷により発生することが考えられるが、牽引損傷に対しては研究代表者が開発した微細剥離解剖層を意識した手技にて反回神経麻痺回避を実現した。熱損傷に関しては、今回、側方熱損傷の概念以外に超音波凝固切開装置でのミスト熱、アドバンスドバイポーラではスチーム熱が発生することを確認できた。 神経は60度以上の熱に晒されると、不可逆性の損傷を生じると言われている。 組織から1ミリほど離したミスト熱は最高温度は45度ほどであったが、スチーム熱は110度まで達する。従来、アドバンスドバイポーラは安全に使用可能であると言われているが、実はその周囲ではスチーム熱による熱損傷を生じる可能性が示唆された。 また、組織残留熱に関しても、同様にエネルギーデバイスを用いた後には、組織に停滞する熱を認めており、その温度は切離後に108度まで達していた。組織切離後に早急に温度は低下するが、その熱により神経麻痺を生じる可能性が示唆された。
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